安倍晋三元首相の銃撃事件から1年の7月8日午前11時半。現場となった奈良市の近鉄大和西大寺駅前の献花台には多くの人が訪れていた。僧侶の読経が流れ、路上では大勢の人が神妙な面持ちで手を合わせていた。そのときだった……。
【写真・ニセ自作銃?】警官が取り上げた黒い筒状のものはコチラ
「やめろ、つかむな!」
と20代とみられる若い男性が大声をあげた。
「下がれ、危ない!」
とスーツ姿の男性がとびかかり、警官が若い男性を取り囲んだ。
その男性は、二つの丸い筒を黒いテープでまとめた、銃に似たようなものを手にしていた。
安倍元首相を銃撃し、起訴された山上徹也被告が使用した自作銃に似た形状をしていたのだ。
若い男性は、3~4人で行動していたようだ。
警察に囲まれると、
「触るな、蹴るなよ」
「とりあえず、こっちへ」
と小競り合いが続く。
ついには若い男性が路上に倒れ、警官が覆いかぶさるようして、銃とおぼしき黒い筒をとりあげた。
そこへ、若い男性と一緒だった仲間が加わり、小競り合いはさらにエスカレート。その間に、暴行のような行為があったのか、うち1人が身柄を拘束され、警察車両に押し込まれようとしていると、
「言論の自由はないのか」
と声をあげて抵抗していた。パトカーのサイレンが鳴り響き、現場は1年前と同じように、騒然とした。
現場にいた人からは、
「あの黒いの拳銃?」
などと驚きの声もあがっていた。
若い男性と一緒に行動していた人によれば、
「現場で知り合って一緒にいた。持っていた銃のようなものはアルミホイルの芯の部分を二つ、黒いテープで巻きつけたもの。山上被告の自作銃に似ているといえばそうですね。けど、火薬が入っているようなものではないです。単なる工作物で、危険なものではありません」
と説明。仲間のうち1人は、「NO CULT」というプラカードを掲げていた。
警備にあたっていた奈良県警の警官は、
「危ないものではありませんが、混乱しているので近づかないで」
とアナウンスを続けていた。