自衛官候補生の射撃訓練の様子(陸上自衛隊第35普通科連隊のホームページより)
自衛官候補生の射撃訓練の様子(陸上自衛隊第35普通科連隊のホームページより)

 候補生一人に「コーチ」と呼ばれる指導役の隊員が一人ついており、弾が込められた弾倉は外から見える箱に入れられて、そのコーチに渡される。そして候補生は待機していた場所に戻る。

 そして自分の班の射撃の順番が来ると、「第〇班、射撃位置に進め」と言われ、銃を持って射撃位置に移動する。

「射撃姿勢をとれ」と号令があり、銃を構える。そしてここでコーチが弾の入った弾倉を候補生に渡し、候補生が銃に弾倉を装着する。

「射撃用意」「撃て」という号令を受けて候補生は銃の安全装置を外し、撃つという流れになる。

 しかし、朝日新聞は捜査関係者の話として、「男は射撃訓練のレーンに入る前の待機場所で発砲した」と報道。NHKも防衛省関係者の話として、「射撃位置につく前に弾倉を装てんしていたとみられる」としている。

 本来ならば、候補生が弾の入った弾倉と銃の両方を手にするのは、射撃姿勢をとったときになる。しかし、報道の通りであれば、候補生は本来とは異なるタイミングで、弾倉と銃を同時に持っていたことになる。

■マニュアル通りだったのか

「管理する側が見落した」「候補生が巧みに詐取した」など様々なケースが考えられるが、元陸上自衛官はこう説明する。

「待機場所で撃ったと報道されていますが、待機場所で銃と弾倉が一緒にあるような状況は本来であれば考えられない。銃の扱いに関しては規則があり、自衛隊として統一されている。弾薬係は複数人おり、弾と弾倉を厳格に管理している。また、射撃場は鼻をかくだけで厳しく叱責されるなど指示のない怪しい動きはすべて制止されます。地域によって異なるということはないと思います。

 仮に待機場所で銃と弾の入った弾倉を持っていたとなれば、マニュアル通りに運用されていなかった安全管理不足が疑われます」

 編集部では防衛省に「待機場所で発砲されたのか」「どのような規則があり、当日はどう運用されていたのか」について尋ねたが、「現在確認している」として具体的な回答は得られなかった。

 安全管理は適切になされていたのか。なぜ事件の発生を防げなかったのか。検証が待たれる。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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