昭恵氏は5月31日、自民党本部を訪れた。吉田氏のほか、安倍派の塩谷立、下村博文両会長代理も顔をそろえ、茂木敏充幹事長と会談した。表向きは安倍元首相の一周忌法要についてというものだったが、安倍派の衆院議員はこう話す。
「次回の衆院選、山口の新3区には吉田氏を、という昭恵夫人の強い希望があり、『いち早くお願いしたい』と茂木幹事長に時間をとってもらったんです。直談判ですね。昭恵夫人は『新しい選挙区は吉田さんに継がせてください』『主人の守ってきた選挙区なのです』と切々と訴えたそうです。茂木幹事長は『地元の意見もあがってくるので、それも聞いてから』と話したそうです」
だが、6月4日の山口県連の定期大会で新たな会長に決まったのは、林外相に近い前県議の新谷和彦氏だった。
県連幹部がこう話す。
「保守王国の山口県らしく、大会には500人以上が集まり盛会でした。会長には林外相が就くと思っていた人がかなりいたと思うけど、引退した新谷先生となって驚く人もいました。林外相が会長になれば、新3区の公認も決まってしまいます。会長が選挙区から出馬できないなんてことはあり得ませんから。林外相が吉田氏のことをおもんぱかり、会長職を辞退したようです」
県連からはこんな声があがっている。
「党本部には、林外相と吉田氏のどちらも新3区からの出馬を望んでいると伝えている。最終的には党本部で決めてもらわないと。これ以上、県連でやれといわれても無理。林外相と“安倍元首相”、どちらの名前も大きすぎる」
6月7日、塩谷氏は岸田文雄首相を訪ね、吉田氏の新3区からの公認を要請した。安倍派としても「安倍家」ゆかりの場所をそう簡単には譲れないという事情もある。
岸田派のある国会議員は、
「塩谷氏には難しい判断であることを伝えたそうです。林氏は閣僚経験があり、岸田派の座長です。派閥の将来を背負って立つ首相候補です。それが比例区から出馬なんて格好悪いことはできません。林氏を公認するのが当然というのが岸田首相の意向です。時間をかけているのは、角が立たないようにしているだけでしょう」
と余裕を見せる。