田村耕太郎著『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(朝日新聞出版)※Amazonで本の詳細を見る
田村耕太郎著『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(朝日新聞出版)
※Amazonで本の詳細を見る

 そもそもジャッジ選手の名誉のためにいっておくが、彼はパワーだけでホームランを打っているのではなく、配球を読む頭脳もあり、広角に打つ技術もある。

「外国人」や「アメリカ人選手」などと日本の解説者は雑に言うが、多くはドミニカ人だったりプエルトリコ人だったり出身地も色々だ。彼らが日本の解説者によって無責任に「アメリカ人」だと言われているのを知ったら怒る選手もいるだろう。皆母国にプライドを持っているから。

 MLBの中でも投球・打球速度も飛距離もトップクラスの大谷選手の登場で、日本人解説者も「あれは日本人にはまねできない打球です、投球です」とか言えなくなったが、根拠のないステレオタイプ化は一度や二度は許されるが、お里がしれてやがて信頼を損なってしまうことを忘れてはいけない。

 多くの日本人は、自分たちのことを繊細だと思っているかもしれない。もちろん、そういう一面もあるが、ある意味鈍感で無神経だとも思う。配慮があるようで配慮が全く足りないところもある。

著者の田村耕太郎さん(撮影:小原雄輝)
著者の田村耕太郎さん(撮影:小原雄輝)

 ステレオタイプに人をジャッジしたり決めつけてものを言ったりしてはいけない。こんなことをいうと「物が言いにくい時代になった」とかいう人がいるが、違いに無神経でリスペクトがないだけである。そういう人は、日本人の中でもいろんな人がいるのにそういう人にも失礼な物言いや対応をしているのだ。

 私たちのステレオタイプなものの見方は根本から疑う必要がある。男性や女性と割り切れない人もいるし、同性が好きな人もいる。食べ物だってわれわれがおいしいと思うものを、皆が本当においしいと思っているわけでもない。笑うところやきれいだと感じる感覚も怒るポイントも違う。

 自分のバリューで相手を褒めていることになっているのだから何を言ってもいいというわけではないのだ。相手に何か言いたいならもっとよく観察して誰からみてもフェアで正確だと言える形で表現してあげることだ。

 これもできないならまさしくアホである。国内で日本人同士であってももっと必要なことだ。本当のリスペクトを学ぶ第一歩はステレオタイプをやめることである。

[AERA最新号はこちら]