自己牽引療法
自己牽引療法

 問診では顎関節症の引き金になる要因を探る。また、関節円板や骨の異常を確認するため、顎のX線検査をおこなったり、ケースによってはCTやMRIなどの画像検査が必要だ。

「顎関節の痛みは関節リウマチや細菌感染が原因の感染性顎関節炎でも起こるため、血液検査を受けてもらうこともあります」(同)

 顎関節症の治療は運動療法がメインになる。顎関節症の治療のゴールは、痛みをやわらげることと、口が開けられることであり、顎関節や咀嚼筋を積極的に動かすことで、顎の周囲の血流がよくなり、その両方が改善する。

 主な運動療法は歯科医師がやり方を教え、日常生活の中で患者自身がおこなうセルフケアになる。手指を使って動かなくなった顎を引っ張る「自己牽引療法」がその代表だ。

 また、咬筋や側頭筋をほぐすマッサージも効果がある。夜間の歯ぎしりの習慣がある場合はマウスピースを使うなど、顎に負担をかける生活習慣を改善していく。これらは「顎関節症治療の指針2020」(日本顎関節学会)に沿った治療だ。

「かつて顎関節症はよくわからない病気といわれていましたが、研究が進み、誰にでも起こる身近な病気だということがわかりました。自然によくなることも少なくありません。このため、手術を含む外科的な治療は最初におこなうべきでないことが治療指針にも明記されています」(同)

 かみ合わせの調整も同様で、運動療法などをおこなっても、よくならない場合に治療を検討する。

「顎関節症の症状が強いときにかみ合わせを調整すると、顎の位置が戻ったときに、新たなズレが生じます。このようなことがないよう、顎関節症に詳しい歯科医師に相談してください」(同)

(文・狩生聖子)

※週刊朝日2023年5月19日号より

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