6月1日、ロシア・モスクワのクレムリンで、オンラインでの会合に出席するロシアのプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)
6月1日、ロシア・モスクワのクレムリンで、オンラインでの会合に出席するロシアのプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 ウクライナでの侵略戦争が続く中、旧ソ連圏でプーチン氏の孤立が進んでいる。関係の深い諸国は、なぜロシアからの距離をとり始めたのか。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。

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 カザフスタンのトカエフ氏も、昨年来、プーチン氏と距離を置く発言が目立つ。

 昨年6月、当時ロシアが独立国として認めていたウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州について、カザフスタンは独立を承認する考えがないことをプーチン氏の面前で明言した。

 10月には、やはりプーチン氏がいる場で、地域の国境問題について「友情、信頼、善隣の精神に基づき、国際法と国連憲章の原則を厳格に順守し、平和的手段によって解決すべきだ」と主張した。名指ししたわけではないが、ウクライナの領土を武力で切り取るプーチン氏への批判とも受け取れる発言だ。

 プーチン氏は昨年9月、不足する兵力を補充しようと、強制的な部分動員に踏み切った。戦場に送られることを恐れた多くの男性が、国外に逃れようと、国境や空港に列を作った。

 トカエフ氏はこのとき「彼らの多くは絶望的な状況でロシアを離れざるを得なかった。我々は彼らの面倒をみなくてはならない」と述べた。プーチン氏から見れば裏切り者であり臆病者の脱出者を、温かく受け入れる姿勢を示したのだ。

■加速するロシア離れ

 中央アジアでは、タジキスタンのラフモン大統領もプーチン氏に苦言を呈した。昨年10月の国際会議の機会に「我々は(人口が)1億人も2億人もいるわけではないが、敬意は払ってもらいたい」「旧ソ連のように中央アジア諸国を扱わないでほしい」と、プーチン氏に直接訴えた。

 かつてソ連の一部だった国々を自らの勢力圏とみなして「ロシアに従って当然だ」と言わんばかりのプーチン氏に対する、強烈な異議申し立てだった。

 とはいえ、中央アジアの国々は、今もロシアとの経済的、人的なつながりが深い。欧州からは地理的に遠く、欧州連合(EU)加入を目指すのも非現実的だ。彼らにロシアとの関係を断ち切るという選択肢はない。

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駒木明義

駒木明義

2005~08年、13~17年にモスクワ特派員。90年入社。和歌山支局、長野支局、政治部、国際報道部などで勤務。日本では主に外交政策などを取材してきました。 著書「安倍vs.プーチン 日ロ交渉はなぜ行き詰まったのか」(筑摩選書)。共著に「プーチンの実像」(朝日文庫)、「検証 日露首脳交渉」(岩波書店)

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