写真:AP/アフロ
写真:AP/アフロ

 ウクライナ戦争が始まって1年3カ月余りが過ぎた。ウクライナが反転攻勢の動きを見せるなど、依然として出口は見えない。戦争は今度どうなるのか。歴史人口学者のエマニュエル・トッドさんとジャーナリストの池上彰さんの対談本『問題はロシアより、むしろアメリカだ』(朝日新書)から、2人が戦争の行方について語り合った内容を本誌で紹介する。AERA 2023年6月19日号の記事から。

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池上:今後、停戦は何らかの形で成立するのでしょうか。もし停戦するのであれば、どのような形なら、停戦の可能性があるんでしょうか。

トッド:これについてはロシアもアメリカも、「停戦したくない」と思っているはずなんですね。つまり、いま、戦争は確かに「ウクライナ」で起きています。

 でも、実際の戦争というのは、ロシア対アメリカなんですね。

 そして、ロシアとアメリカの間では、アメリカは負けを認めないだろうと思いますし、ロシアも自分が勝ったと言えるような状況ではないわけです。そうすると、停戦というのはあり得ないと私は見ています。

 つまり戦争が長期化する。第1次世界大戦や第2次世界大戦のような長期戦になるでしょう。そしてそうなってくると、どちらかがつぶれるまで戦争は続くというわけですね。

 ただ、これに関しては、私が間違っているかもしれない、もしそうだったらどんなにいいかと私は思います。しかしながら、ヨーロッパにいて、いま、より感じられるのは、戦争の泥沼化というか深刻化の可能性です。

池上:停戦の可能性については私もまったく悲観的です。

 プーチン大統領は22年6月9日、同日生誕350年を迎えたロシア皇帝、ピョートル1世に敬意を表して「北方戦争」(1700~21年)の話をちょっと演説で取り上げたんですよね。つまり、この北方戦争ではピョートル大帝がスウェーデンに勝ったと。

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