似たような純資産総額でも信託報酬が1.6%違うだけで、金融機関の取り分はこんなに変わる(この図の脚注は本記事の一番最後に記載)
似たような純資産総額でも信託報酬が1.6%違うだけで、金融機関の取り分はこんなに変わる(この図の脚注は本記事の一番最後に記載)

 つみたてNISAの対象投信の中で信託報酬が安いものは0.09%台(指数の利用料や基準価額の算出費用などを信託報酬に含めている、一般的な投資信託の場合)。

 一番高いものは外資系のアクティブ型の欧州株投信で1.65%台だ。

 日本の投信の中で純資産総額(投信の規模)のトップは、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」。この投信の信託報酬は0.09372%以内(年率、税込み/以下同)。2023年4月25日現在で最も低い水準である。

 一方、純資産総額2位の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース」も純資産総額1兆7000億円台と絶大な人気を誇るが、信託報酬は1.727%と高め。

 この2つの投信の基準価額が年率5%ずつ増えていったと仮定する。その際、信託報酬がどれぐらい利益に響いてくるか?

 信託報酬が約1.6%違うと利益の差は10年目に23.4%、20年目に70.2%、30年目には158%!

「信託報酬の高い低いは投資期間が長いほど利益に影響します。長期投資が基本のNISAやiDeCoでは信託報酬が安いものを選びましょう。ざっくりの目安として、0.3%以下なら合格です」

 信託報酬と一緒に純資産総額もチェックしよう。規模が大きいほうが運用しやすく、繰り上げ償還(途中で運用をやめること)のリスクも低い。

 一般的には100億円以上あれば安心。インデックス型投信の場合は、マザーファンドと呼ばれる「運用元である親」が後ろに控えている場合が多いので、数億円でも問題ない場合はある。

■「売却コストなし」も

 3つ目のコストは信託財産留保額。投信の売却時に基準価額から差し引かれるため気づきにくい。

「新興国の株式や債券が入った投信(バランス型投信を含む)、一部の日本株投信などで取られる場合があります。基準価額の0.05~0.75%程度で、投信によって異なります。最近は信託財産留保額のない投信も増えました」

(写真/本人提供)
(写真/本人提供)

※この記事に掲載した図の脚注…信託報酬(税込み、上限)は2023年4月25日現在、純資産総額は同年3月末日現在。米国株投資信託で大人気の2本の、金融機関の取り分(年率)を目論見書記載の公表数値で試算(小数点2位以下切り捨て)。「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の金融機関への料率の詳細/運用会社…純資産総額5000億円未満の部分=0.0326%(税込み0.03586%)、5000億円以上1兆円未満の部分=0.0325%(税込み0.03575%)、1兆円以上の部分=0.0324%(税込み0.03564%)。販売会社…純資産総額の大きさにかかわらず、0.0326%(税込み0. 03586%)。信託銀行…純資産総額5000億円未満の部分=0. 02%(税込み0.022%)、5000億円以上1兆円未満の部分=0.0195%(税込み0.02145%)、1兆円以上の部分=0.019%(税込み0.0209%)

編集/綾小路麗香、伊藤忍

『AERA Money 2023春夏号』から抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

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