AERA 2023年5月15日号より
AERA 2023年5月15日号より

 ただし、入院が必要になるなど重症化する割合は、BA.1やBA.5、BQ.1と同程度だとみられている。

 英健康安全保障庁(HSA)は、22年4月4日~23年2月24日に遺伝子解析したウイルスの増減の速度などから、オミクロン株の様々な亜系統の感染の広がりやすさを推計した。XBB.1.9.1は、XBB.1.5に比べ、さらに10%近く感染が広がりやすいとみられた。

 英HSAは4月21日現在、XBB.1.16もXBB.1.5より感染が広がりやすいとみられるものの、まだデータの数が少ないため確実ではないとしている。XBB.1.9.1やXBB.1.16の免疫回避能力と重症化率についてはまだ不明だ。

 英国内では、XBB.2や、XBB.1.9.2といった、新たなXBB系統の亜系統も報告されている。

■第8波を超える可能性

 全国の感染者数は、4月に入り、東京などの都市部を中心にわずかずつ増える傾向にある。厚生労働省の専門家会議の座長を務める脇田隆字(たかじ)・感染研所長ら専門家4人は4月19日、今後の感染がどう推移するかの予想を発表した。

「第9波の流行が起きる可能性が高い。国内では(英国などに比べて)自然感染の罹患率が低いことを考慮すると、第9波は第8波よりも大きな規模の流行になる可能性も残されている」

 厚労省が2月3日~3月4日に5都府県で実施した住民の抗体調査では、自然感染したと考えられる住民の割合は32.1%だった。2月に実施した献血者の調査では感染したとみられる人は42.3%だった。一方、英HSAが昨年10月~今年1月に実施した献血者の調査では、感染したことのある人の割合は86.1%だった。

 英国では感染経験者が多いため、これまでの亜系統よりも感染が広がりやすく、しかも免疫回避しやすいXBB系統が主流になっても流行の波はさほど大きくならなかった。

 しかし、国内では、XBB系統が主流になるだけでなく、大型連休で人と人との接触が増え、さらに5月8日からは新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行し、法律に基づく感染対策が大きく緩和される。そのため、第9波は大きな流行になる可能性がある、と専門家有志は指摘している。

 その上で、特に重症化リスクの高い高齢者ほど、すでに感染した人の割合が低いことも踏まえ、次のように助言した。

「死亡リスクの高い高齢者や基礎疾患を持つ人たちに対する対策は5月8日以降も継続する必要がある」

(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2023年5月15日号

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