エルニーニョ現象は発生に近づいています。ただ、予測にはまだ不確実性もあります。夏にかけてエルニーニョ現象が発生したとしても、通常のエルニーニョ現象の夏の傾向とは違い、暑い夏になる可能性もあります。
エルニーニョ現象発生に近づく 大気の循環への反応はまだみられず
気象庁が今月5月12日に発表した、エルニーニョ監視速報によると、4月のエルニーニョ監視海域の海面水温は、基準値より高い値になりました。太平洋赤道域の状況は、エルニーニョ現象の発生に近づいており、今後、夏までの間にエルニーニョ現象が発生する可能性が高い(80%)とのことです。
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。日本を含め世界中の異常な天候の要因になり得ると考えられています。
エルニーニョ現象の基準は、国によって微妙な違いがありますが、日本の気象庁だけでなく、アメリカ海洋大気庁、ヨーロッパ中期予報センター、オーストラリア気象局など、各国一致して、夏にかけてエルニーニョ現象が発生する傾向を計算しています。
とはいうものの、気になることもあります。エルニーニョ現象は発生に近づいていますが、大気の循環には、それに対応する変動が、ほとんどみられない状況です。
「春の予測の壁(スプリングバリア)」まだ越えていない 越えるのはいつ頃?
エルニーニョ現象など太平洋における数年規模の変動と、それに対応する熱帯域の大気の循環の変動、これら一連の変動は、北半球の春に行う予測には不確実性があることが知られています。「春の予測の壁(スプリングバリア)」とも呼ばれており、春は予測をスキップしてしまいたい、とまでいわれる程です。
通常は、6月のデータを用いて計算される予測は、比較的不確実性が減少します。気象庁が7月に発表するエルニーニョ監視速報にあたります。この頃までは、予測の不確実性が、ある程度あると考えられます。
参照:noaaホームページ
https://www.climate.gov/news-features/blogs/why-making-el-ni%C3%B1o-forecasts-spring-especially-anxiety-inducing
20世紀最大といわれるエルニーニョ現象と2014年エルニーニョ現象の崩壊
1997年は、3月から熱帯太平洋西部で、大規模な強い西風が数日から数週間続く現象、西風バーストが発生しました。西風の変動が、時間の経過とともに、強まりながら東へ移動、1年以上継続し、エルニーニョ現象が発生しました。
11月は、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差は+3.6℃を記録、記録が残る1950年以降で最大になりました。20世紀最大といわれる1997/98年のエルニーニョ現象です。
2014年は、1月に西風バーストが発生しました。観測データとの単純な比較では、20世紀最大といわれるエルニーニョ現象の再来か、ということで、各国各機関が注目し、日本の気象庁も、3月の時点で、夏にエルニーニョ現象発生の可能性を発表しています。
ところが、4月まで続いた西風の変動は、何らかの理由で収まり、その後、ほとんどみられなくなりました。
気象庁は、7月の時点で、エルニーニョ現象の発生には至っておらず、夏にエルニーニョ現象が発生する可能性はこれまでの予測より低くなった、と発表しています。エルニーニョ現象の崩壊です。
エルニーニョ現象の発生や進行には、西風バーストが発生し、西風の変動が強まる必要があるという指摘もあります。西風の変動を予測できるのは1週間から10日程度で、夏にかけての動向は、春の時点ではわからないのです。
参照:海洋研究開発機構ホームページ
https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/column-20140730/
今年の梅雨~夏の天候の傾向
春の予測の壁はまだ越えていませんが、夏にかけてエルニーニョ現象が発生する可能性も、もちろんあります。ただ、発生したとしても、今年はインド洋の海面水温が低い影響で、典型的なエルニーニョ現象ではないことが考えられます。
通常、エルニーニョ現象の夏(6月~8月)は、気温が低く、日照時間が少なく、西日本の日本海側では降水量が多い傾向があります。梅雨明けは、中国地方や四国地方などで遅い傾向があります。
今年の夏は、気温は平年並みか高いでしょう。梅雨入りは平年と大きく変わらない地方が多く、7月は梅雨前線の活動が活発になり、降水量が多くなる時期もある見込みです。
梅雨明けは、平年より遅くなることはなさそうですが、梅雨が明けても、南から流れ込む暖かく湿った空気の影響で、局地的に雨雲や雷雲が湧きやすいでしょう。
今年も、梅雨の大雨に注意、警戒が必要で、暑い夏になる可能性があります。今後、最新の長期予報をご確認ください。