一席目を喋りながら、トリでやる予定の『あとの祭り』を頭ん中で反芻して、降りたら天どん兄さんの新作『折衷案』を袖で聴きつつ、自分のネタに活かせるところはないかと考える。ないな、と諦め、休憩、天どん一席、ついに私の『あとの祭り』です。初めて通して声に出して、お客さんの前で喋る新作落語。高座に上がる直前までサゲ(落ち)を迷って、喋りながら「もうこれでいくか」とふた通り考えたサゲのうちの、控えめな方を選びました。

 結果としては、まあまあなんとかなった……かな。しかし、もっと早く支度しておけばもっと良いモノが出来たかもしれません。でもこの追い込まれ加減が、いい方向に作用するのかも。いっつもこんな具合ですから。もう予め余裕を持って物事に臨むなんて、ここしばらくしてないかもしれません。これでいいのか? これでいいよな。ま、これでいけるとこまでいきましょう。

 さて話は変わって、明日6月22日は初めての大腸内視鏡検査を受けるのです。お尻にカメラが入ります。あー、今のうちに下剤を2リットル作らねば。そしてそれを冷やさねば。常温じゃ飲み干すのが死ぬほどつらいらしいからね。こればかりは今のうちにやらねばなりません。

 それをやったら原稿を送信します。もうちょっとお待ちください、担当さん。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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