しかし、彼女にはまだ自分が思い描く「ふつうの女の子らしい」夢が残されている。

「私のこと好きになってくれる人はいないの?」

(甘露寺蜜璃/14巻・第123話「甘露寺蜜璃の走馬灯」)

 この願いは近いうちに、彼女のもとに現実となっておとずれる。誰よりも短い恋、そして誰よりも幸せな恋。今後、さらに過酷になる鬼との戦いだが、甘露寺蜜璃の「恋柱らしい」強さは、たくさんの人を救う。彼女の優しさと明るさをラストシーンまで見守りたい。

◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。AERAdot.の連載をまとめた「鬼滅夜話」(扶桑社)が好評発売中。

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