そんな中で阪神を追うために重要になるのが投手陣だ。現在はリーグ防御率5位と阪神とは大きな差となっている。左右の柱である今永昇太と大貫晋一が出遅れ、期待の大きかったバウアーも打ち込まれているのが大きな誤算で、抑えの山崎康晃も安定感を欠いている。ただその中でも東克樹と平良拳太郎が復活し、リリーフも新外国人のウェンデルケンが戦力となっているのはプラス材料だ。彼らが踏ん張っている間に、本来の主力がいかに早く調子を取り戻すかというところが重要になるだろう。
阪神、DeNA以外の4球団は大きく水をあけられている感は否めないが、ここへ来て不気味な存在になりそうなのが巨人だ。開幕当初は昨年からの課題である投手陣が大きく崩れ、打線もなかなかかみ合わない印象だったが、それでも5月16日からは5連勝するなどじわじわと順位を上げてきている。先発投手では横川凱、山崎伊織が結果を残し、育成ドラフト1位ルーキーの松井颯も初先発でいきなり快投を見せるなど若手の台頭が見られてきたのが大きい。
中継ぎ陣もトレードで獲得した鈴木康平、故障から復帰した中川皓太、DeNAを戦力外になって育成契約から這い上がってきた三上朋也などが加わり、徐々にブルペンの厚みも増してきた印象だ。ここにエースの菅野智之が戻ってくれば、ある程度戦える戦力になるだろう。打線も開幕当初は不振だった坂本勇人と丸佳浩の中軸2人が徐々に復調。若手では秋広優人が見事な活躍を見せており、外国人選手もウォーカーが調子を上げてきている。ここに怪我で離脱中の中田翔が戻ってくればさらに得点力アップも期待できるだろう。
広島、ヤクルト、中日の3球団は故障者の復帰など大きな上積みが見込めない分、上位3チームに比べると厳しい印象は否めないが、交流戦で大きく順位が変動することもよくあるため、まだまだ諦めるには早い時期である。残り約100試合、最後まで熾烈なペナント争いとなることを期待したい。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。