一方、同じ投信内で再投資された分配金は、投信の基準価額の上昇に反映されます。一度も『外』に出ていないわけで、こちらは利益として積み上がった状態です。
その結果、いざ売却するときは東証ETFのほうが、税金がかかる『利益部分』が少なくなります」
パターン2(東証ETF/自分で再投資)の「利益」は約42万円、それに対してかかる税金は8万円台。パターン3(投信/自動で再投資)の「利益」は60万円に増えるが、税金も12万円超に。なるほど!
分配金が出るたび、いちいち手動で再投資するのは面倒だ。その手間を考えると、自動で分配金を再投資してくれる投信のほうが、ほったらかしの長期資産運用に便利であることは否定しない。
再投資の手間が惜しくない人は、東証ETFを買ってみてほしい。税引き後の手取り額で投信よりわずかながら有利になるなら、多少はやる気も出る。
では、分配金も売却時の利益も非課税になるNISA口座で運用した場合はどうだろう?
その試算が、図のパターン4~6である。
パターン4(東証ETF/再投資なし)の売却後の手取り額(非課税)(4)は約140万円と一番低い。これは予想通り。
そして、パターン5(東証ETF/自分で再投資)とパターン6(投信/自動で再投資)の売却後の手取り額(非課税)(4)は同じ160万4625 円だった。
再投資された分配金が投資元本に乗るか、利益に乗るかという違いはあるが、NISAではすべて非課税なので最終的に変わらないのである。
あれ、でも東証ETFは分配金にかかる米国の税金10%が調整される分、投信より有利だったのでは?
「NISA口座で買った場合、東証ETFも二重課税の調整はされません。調整されるのは特定口座で買った場合です」
なんと。さすが公平・中立の東証。都合の悪いことも言う。ということで、NISAでは、分配金にかかる米国の税金に関しても投信と東証ETFの条件は同じになるのだ。勉強になった。
編集/綾小路麗香、伊藤忍
※『AERA Money 2023春夏号』から抜粋