佐賀県武雄市で、2014年10月から、小学1年生を対象にしたプログラミング教育の実証研究が始まる。プログラミングというと、プログラムを作動させるための言語を勉強し、打ち込んでいくという難しい印象だが、この研究では、子どもでも分かりやすく、楽しくプログラミングの概念を学べるという。果たしてどのような方法なのだろうか。
武雄市が導入するのは、キーボードで打ち込むのではなく、タブレット端末を使い、視覚的な方法でゲームなどのソフトウエアをつくるプログラミング教育だという。インターネットソフト開発会社のディー・エヌ・エー(DeNA、本社・東京都渋谷区)ならびに東洋大学と共同で行い、2015年2月までの5カ月間にわたる授業を通して、「論理的思考力」や「構成などを考える想像力」、「空間や距離感を認識する力」を伸ばす観点から、児童にとってプログラミング教育が有効かどうかを調べる。
研究では、DeNAが授業で使う専用ソフトウエアを開発し、東洋大学が授業の教育効果の分析を担当する。
今回は、武雄市立山内西小学校の1年生40人を対象に授業が行われ、放課後に1回40分程度、全8回実施する予定としている。講師はDeNAの取締役で最高技術責任者の川崎修平氏が務める。教材にはテキストではなく、現在開発中のソフトを使う。このソフトでは、タブレット端末の画面に表示された「まんなかにいどう」「はんたいをむく」「やすむ」などの動作の順番やパターンをタッチ操作で、パズルのように組み合わせ、キャラクターを動かす、というようにプログラミングを体験出来るのだという。
今回の取り組みは、東洋大学現代社会総合研究所・ICT(情報通信技術)教育研究プロジェクトに企業として参加していたDeNAが、ICTを活用した教育に力を入れている武雄市に呼びかけて実現した。
武雄市は、2014年5月から、算数などの授業で、児童が教材をダウンロードしたタブレット端末を自宅に持ち帰って予習し、学校では意見発表や実験といった発展的な授業を行う「反転授業」を取り入れている。
実証研究について、武雄市教育委員会の担当者は、「単なるプログラマーの養成という視点ではなく、ITに対してアレルギーのない児童の育成が出来るのではないかと期待している。ものづくりを通して、筋道を立てて考える力や先を見通す力、試行錯誤しながら目標を達成する力を身につけてほしい」と話す。
DeNAの広報担当者も「今回の研究は社会貢献活動の一つ。プログラミングに親しんでテレビやゲームの仕組みを理解し、最終的に国際競争力の強化につながればいい」と期待している。
2014年12月に研究の中間報告、2015年3月には二次報告が行われる予定だ。