『Songs for Young Lovers & Swings Easy』Frank Sinatra
『Songs for Young Lovers & Swings Easy』Frank Sinatra
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『After Midnight』 Nat
『After Midnight』 Nat "King" Cole
『Something Cool』June Christy
『Something Cool』June Christy
『Beauty & The Beat』Peggy Lee
『Beauty & The Beat』Peggy Lee
『Mercy Mercy Mercy』Julian
『Mercy Mercy Mercy』Julian "Cannonball" Adderley

 レーベル特集の4回目はキャピトルです。しかし、一般ジャズファンにとってのキャピトルに対するイメージってのが良くわからない。マイルス・デイヴィスの『クールの誕生』を思いついても、後が続かないのでは……それもそのはず、キャピトルのメイン路線はフランク・シナトラ、ナット・キング・コールといったヴォーカルもの。両者とも超一流とは言え、ハードバップ・ファンが中心層を成す日本のジャズファンのド真ん中とは言いがたいのですね。私は二人とも大好きです。

 というわけで、まずはこの御両人。キャピトルのシナトラはそれこそ名盤の宝庫だけど、とりあえず1枚というなら『スウィング・イージー』と『ソングス・フォー・ヤング・ラヴァーズ』がカップリングされた『スウィング・イージー』か。マイルスも愛聴したという《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》を聴けば、この名曲のヴォーカル最良ヴァージョンであることが納得されるでしょう。

 ナット・キング・コールもなまじポピュラー・シンガーとして名を成してしまったため、かえってジャズ・ファンからは軽く見られがちですが、どうしてどうして。ハッキリ言って、私にとっての最高の男性ジャズ・ヴォーカリストを挙げろと言われれば、まっさきにこの人の名前が出ますね。推薦アルバムは『アフター・ミッドナイト』。ご存知《ルート66》や超メジャー《キャラヴァン》まで入っているけれど、他にもリー・モーガンの名演で知られる《キャンディ》やら《イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン》など、ジャジーな名唱にもこと欠きません。

 ともあれ、この二人をお聴きになれば、「歌の巧さ」ということに対する認識がゴロリと変わること疑いなし。というか、この二人を聴かずして男性ヴォーカルについて語ってほしくはありません。2枚とも、超おススメ。

 女性ヴォーカルに目を移せば、これはなんと言ってもジューン・クリスティさまにご登場いただかぬわけには行きません。元祖ハスキー・ヴォイスの極め付き『サムシン・クール』は、お洒落な都会派ジャズ・ヴォーカルの白眉。しかし私はジジイ趣味か、もうちょっと脂の乗った(イヤらしいですね)ペギー・リーさまがお好み。ヴァイブの入ったクール・サウンドで一世を風靡したジョージ・シアリングとの共演盤『ビューティ・アンド・ザ・ビート』の小粋さがたまりません。

《セントルイスから来た人》やら、コール・ポーターの名曲《ゲット・アウト・オブ・タウン》(どういうわけか古い日本盤では《つらいけど行って》となってます)など、聴かせどころ満載。

 意外なところでは、ファンキー大将キャノンボールの『マーシー・マーシー・マーシー』もこのレーベル。そして、パーカー・ナンバーをサックス・アンサンブルで再現するという離れ業をやってのけたのが『スーパー・サックス』。何枚か出ましたが、私は『プレイズ・バード・ウィズ・ストリングス』が好き。《時さえ忘れて》から《イフ・アイシュド・ルーズ・ユー》まで、パーカーの気分を実に巧く写し取っています。[次回5/19(月)更新予定]

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