米誌タイムが毎年発表する恒例の“パーソン・オブ・ザ・イヤー”(今年の人)に、“The Silence Breakers”(沈黙を破った人々)として、性的暴行や嫌がらせを証言した女性たちが選ばれた。告発後に解雇された米大物映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる長年のセクハラを最初に告発した女優のアシュリー・ジャドを始め、活動家、政治家、病院従事者など、様々な職業の女性たちの中にテイラー・スウィフトの姿もある。
テイラーは2013年に米コロラド州のラジオDJデヴィッド・ミュラーと並んで写真を撮影した際、スカートをめくられ尻を掴まれたことを彼の職場に報告した。ミュラーはすぐに解雇され、その2年後に彼はテイラーの虚言のせいで職を失ったとして多額の損害賠償を求める裁判を起こしたが、テイラーは直ちに逆提訴し、2017年8月に1ドルの賠償金を勝ち取った。
8月に法廷で証言した時以来初めて自身の体験についてタイム誌に語ったテイラーは、公判の間、ミュージシャン仲間のケシャに悩みを聞いてもらっていたと明かしている。ケシャもプロデューサーのドクター・ルークを性的暴行などで訴えている訴訟が2014年10月から泥沼化している。「彼女とは電話で話したけれど、やる気が挫かれるような審理を経験したことがある人に相談できたのはとても助けになった」とテイラーは話している。
どんな気持ちで法廷に立っていたのかとの問いには、「証言した時、既に1週間出廷していて、無意味なディテールやバカげた詳細についてあの男の弁護士が私の弁護団と母をいじめ、しつこく苦しめ、嫌がらせをし、私たちが嘘つき呼ばわりされるのを見続けなければならなかった。母は反対尋問の後に体調を崩し、私が証言台に立った翌日は出廷することが体力的に不可能だった」と答えている。
「私は怒っていた。あの瞬間、私は法廷の形式的行為は全て放棄して、起こったことについて聞かれた通りにただ答えようと決心した。私を襲った時にあの男は形式になんてこだわってなかったし、彼の弁護士だって母に対して手加減しなかった。だったらどうして私が行儀良くする必要があるの?コロラドの連邦裁判所で“ass”(ケツ)って言葉が最も使われた(裁判だった)らしいわ」と彼女は当時の気持ちを振り返っている。
同じような体験をし、悩んでいる人々に対しテイラーは、「セクハラや性的暴行事件の被害者は責めを負わされがちだ。(事件が)そもそも起きたのも、それを報告したのも、それに対する反応も全てあなたのせい。あなたが過剰反応していると思わされるかもしれない。社会がこういうことをあまりにも矮小化しているから。私からのアドバイスは、自分を責めるな、他人があなたに負わせようとする責任を認めるなということ」とエールを送っている。
彼女はまた、弁護士を雇うだけの経済力があっても、たとえ勝訴しても、「このような行動に向き合う為に裁判を起こすのは孤独で消耗する体験だ」と心情を吐露している。彼女が勝ち取った1ドルはまだ支払われていないそうで、その挑戦的な行動そのものが相手の本心を象徴していると彼女は話している。