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1990年秋発表の『ラグド・グローリー』は、ニール・ヤングの完全復活を強く印象づける作品だった(復活という表現は失礼かもしれないが)。レコーディングを通じて彼は、クレイジー・ホースとの絆を再確認してもいる。また、新たに手にしたシステムによってレスポール+フェンダー・ツイード・デラックスの音をさらにスケールアップさせてもいた。
年が明けるとすぐ、ニール・ヤング&クレイジー・ホースは、北米ツアーを開始している。4月にかけて50回以上。NYのマディソン・スクエア・ガーデン、LAのメモリアル・スポーツ・アリーナなどを含む、ひさびさの本格的なツアーだ。ステージ上には巨大なギター・アンプが置かれ、《ヘイ・ヘイ、マイ・マイ(イントゥ・ザ・ブラック)》で幕を開けるという、明らかに『ラスト・ネヴァー・スリープス』からの流れを意識した内容だった。そういった流れやつながりは、『ラグド・グローリー』の制作過程で、ニール自身が誰よりも強く意識したことだったのだろう。
ステージでは、連日、約2時間にわたって15曲前後が演奏された。若干の変化を加えながらも、ほぼ固定されたプログラムでツアーはつづけられ、アコースティック・セットはなかったようだ。そのツアーの後半からピックアップされた各曲のベスト・テイクを実際のコンサートと近いシークエンスで収めたのが、CD2枚組のライヴ・アルバム『WELD』だ。ツアー終了から半年後の91年秋にリリースされたこのアルバムでは、ニールとデイヴィッド・ブリッグスに加えて、クレイジー・ホースのベース奏者ビリー・タルボットもプロデューサーとしてクレジットされている。
収録曲、つまり91年のツアーで演奏された曲は、《ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド》から『ラグド・グローリー』にかけてのものが中心だが、《シナモン・ガール》や《トゥナイツ・ザ・ナイト》、《ライク・ア・ハリケーン》といったクラシック的名曲も取り上げられている。戦場のSEからスタートする《風にふかれて》と約10分に及ぶ《コルテス・ザ・キラー》は、イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸戦争を強く意識したものだったのだろう。
ニールは全編で強烈な存在感のギターを弾きまくり、力強く歌い、それを、優れたヴォーカル・ユニットでもあるクレイジー・ホースがしっかりと支えている。まさに「ウェルド=溶接」という言葉のイメージそのままの仕上がりだ。[次回10/28(月)更新予定]
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