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 この連載では、僕が主催するTAKE ACTION FOUNDATION CHARITY GALAのオークションに出品する伝統工芸家と現代のクリエーターのコラボレーション作品について度々紹介してきたが、実は、毎回コラボ作品以上に頭を悩ませるのが、「体験型」の提案だ。できるだけ多くの方々に楽しんでいただくために、コラボ作品以外にも〝ここでしか実現しないであろう体験〟を毎年いくつかオークションに出品している。これまで、人間国宝が自分のために作品を作ってくれる権利や、アーティストが自分のためだけに演奏してくれる権利、無重力体験などを〝出品〟、コラボ作品に負けず劣らずオークションを盛り上げている。

 今年2月のガラで体験型のメインとしてエントリーされたのが、「ミラノでのグッチのファッションショーを最前列で見ることができる権利」。毎年2回、ブランドが最新のコレクションを発表する場に参加できるのは、世界的なジャーナリストかバイヤー、セレブリティだけだ。その限られた最前列に座れるのは、ブランドにとって最重要とみなされる人物。ジャーナリストは、このフロントに座れるかどうかで、〝地位〟が決まると言われるくらい重要な場所だ。本来なら、まず無理であろうこの提案をグッチが快く引き受けてくれたのは、ガラに対する共感と信頼があったからだろう。

 6月のファッションショーには僕も出席。右隣には女優の武井咲さんが座り、反対の左側にオークションの落札者の方が座った。少し緊張しているように見えたが、この貴重な体験を心から楽しんでいるようだった。今回落札されたのは、「ミラノでのコレクションを最前列で見る権利」だったが、落札者がイタリアを訪ねると、グッチ側のはからいで、展示会やパーティーにも参加できた。さらにはフィレンツェのミュージアムや通常は公開していない工房も訪ね、メイド・イン・イタリーの職人技を見ていただいた。ガラの落札者を丁重に扱ってくれたグッチには、本当に感謝している。

 今、また来年のガラに向けていろいろと準備を進めている。このガラも数年続いているので、リピーターが多くなってきたのは嬉しいのだが、一方でその方々を楽しまるせためには、オーガナイズをする僕たちの方にも毎年クオリティーの向上が求められる。オークションに出品するコラボ作品も体験型も同じ。体験型の基準は、僕自身が「それを体験してみたい」かどうか。アイデアはいろいろ集まるのだが、実際に面白い!と思えるものは限られるし、そこから実現できるかどうかのハードルも高い。でもハードルが高ければ高いほど、魅力あるオークションになるのも事実なので、主催者としては頑張らざるを得ない。

 来年はどこで、どんなテーマで、どんな趣向でやるかは、もう少し内容を詰めてから発表したい。これまで参加した人でも、初めての人でも、今回が1番だったと心から思えるガラを実現したいと思っている。