猛獣やヘビ、ダニ、ノミ、ばい菌、寄生虫、彼らは長らく人類の敵だったが、現代都市ではほぼ完璧に排除されている。ところが今、クローン病やアレルギーなど新しい病気が猛威をふるい始めた。人間の文化や戦争の起源まで視野に入れながら、自然と人間はどうかかわるべきか、あるべき社会の姿を探る。
 寄生虫は免疫抑制物質を出して免疫システムの攻撃を防いでいるが、免疫システムはそういう寄生虫がいる前提でうまく働くようにできている。その寄生虫を駆除すると勢い余って余計な攻撃を始めてしまうのだ。
 また虫垂炎は途上国ではまれ。無用の長物と思われていた盲腸は、最近の研究で病原菌を撃退する腸内細菌の格納庫であることが判明。先進国では攻撃すべき病原菌の侵入がなくなったせいで、虫垂が炎症を起こすのではないかという。
 著者は寄生虫を体内に入れるクローン病治療や都市のビルを農園にする計画を紹介、人に恩恵を与える種のみ賢く選択して自然と共生せよと書く。それも少々人間のご都合主義な気もするが、長年の敵を友人として見直す時にきているのは確かだろう。

週刊朝日 2013年10月11日号

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