本書は、2000年代以降における日本のポップミュージックの歩みを考察したものだ。いまや音楽はただ「聴取」するのではなく、「遊び」として消費されるようになっている、というのが著者の見立てであり、その現象を「トランスフォーム(分割・変身・合体)」というキーワードを用いて論じていく。
 かつてアルバムとして聴かれていたものが曲単位で配信され(分割)、リミックスや着メロによって原曲が姿を変え(変身)、カラオケや音楽ゲームのようにアーティスト以外の人が音楽に関わる(合体)ことで、音楽に遊ぶ余地が生じた。そこに、インターネットのソーシャルネットワークが広大な遊び場を提供した。
 著者は動画投稿サイトやボーカロイドの初音ミク、音楽自体より握手会や総選挙が話題になるAKB48などを参照し、ソーシャルな「つながり」の中で音楽が解体され、誰でも音楽の現場に参加できるようになった状況を分析。さらに、トランスフォームのありようを60年代のロックフェスなどに接続し、時代的な連続性をも浮かび上がらせる。その手腕たるや見事というほかない。

週刊朝日 2013年5月3・10日合併号