女性は、70代の実母が出産を機に退職せざるを得ず、悔しい思いをした話を聞かされて育ったこともあり、「キャリア最優先。やめたらパートくらいしかない」と考えて仕事に没頭してきた。その結果、第1子の出産は35歳。周囲のキャリア女性の多くが高齢出産なので「自分は普通でむしろ早いくらい」と思ってきたが、最近は入社間もない20代で出産する後輩が増えているという。女性は言う。
「私の世代で20代で産むと、本人も周囲も『社内でどう扱えばいいかわからない』状態に陥った。今はそれがほとんどない。さっさと産んでから『子連れ海外赴任』する人が登場した時には、そんなこと思いつかなかったと愕然(がくぜん)としました」
■先輩たちが大変そうで
若い世代の働くことへの「軽やかさ」。それはどうやって身についたものなのだろう。電通若者研究部の山口志歩さん(27)は、
「私もそうですが、今の20、30代は生まれた時から不景気なので、働くことは自分に対する保険です。とはいえ、同じ会社でずっと働くことを想定しておらず、40代以上が会社での出世、給与アップに力を入れることと対照的に、自分のスキルや生活に重きを置く人が多い」
と分析。加えて、子育て世代の働く女性の先輩たちが、とてつもなく大変そうに見えていることも若い世代の価値観に影響を与えているという。
東京都中央区の会社員女性(29)は、出産後も働き続けるつもりだ。せっかく働くなら正当に評価されたいし、スキルも身につけたいと思っているが、あることに気づいたという。
「ロールモデルがいないんです」
少し上の氷河期世代の先輩たちの多くは、時短勤務。時間に追われながら、業務をなんとか終わらせ、風のように帰宅していく。限られた時間では、任せられない仕事もあると感じる。
「それでいいのかなって。男性育休の制度はあるのに、先輩たちを見ていると、結局女性が家事や子育ての多くを担っている。女性の自己犠牲の上に成り立っていると思ってしまいます」
東京都江戸川区の会社員女性(29)も言う。
「子どものいる女性の先輩が、必死に現状維持をしている姿に違和感があります。これが私の未来? 私はああはなれません」
電通若者研究部の木伏美加さん(34)は「ミレニアル世代はロールモデルを捨てた」という。