私は和服男子に弱い。それから最近は女装男子にも弱い。こういう男の子を見つけると、お友達になりたくて、フラフラと近づいていってしまう。

 そんな私のためにあるようなお店を見つけた。その店の名は「若衆バーBar・化粧男子」という。なんとここでは女性の着物を着た男子が話し相手になってくれるらしい。正直、盆と正月が一緒に来たような心境になった。そうか、そのテがあったのか、男の子が女性の着物を着れば、ひとりの男子で2倍楽しめてしまうではないか。

 勇んで向かったバーは、週末だからか、開店時間直後に行ったにも関わらず、すでに先客がいて賑わっていた。
 迎えてくれたのは、着物姿のキャスト3人。3人ともとても綺麗にお化粧していて、女性にしか見えなかった。私がお話をしたかたは、幼い頃から恋愛対象が男性で、自分が男であることに違和感をおぼえていて、戸籍も「女性」に変えたのだそうだ。
「そうか~、女は恋愛対象としては見てはもらえないのね~」
 正直言って、私は少し淋しくなった。私は化粧した和服の男子と、どこか倒錯した恋愛をしたい、という願いを持っているものだから。
 でも店長の魅夜(みや)さんは、
「私は男性も女性も両方好き」
 と言う。どうやら恋愛対象は人それぞれ違うようだった。
 とにかく彼女らは話し上手で、あっというまに3時間が経過し、私は飲んだりキャストさんに振る舞ったりして8400円分、楽しく遊ばせていただいたのだった。

 この店だけでなく、最近、私の周りでも趣味で女装をする男の子が増えている。「変身して楽しいから」というコスプレ気分でしている子がほとんどで、平気で外出する人もいる。
 女になりたい。でも男の部分も捨てきれない。そんな彼らの曖昧な心身に、たまらない愛おしさを感じてしまう。
 そういえば先日観た舞台「ニンギョヒメ」でも、いしだ壱成さんが人魚役を演じ、せつない女心に共感した観客達は涙し、連日満員だった。今後こうした男女の境界越えは、もっと増えてくるだろう。
 そして私は、そんな曖昧な彼らの姿にそそられて、これからも追いかけてしまうことだろう。

▽店長の魅夜さん

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