ヤッター! ついに1億ドル貯まった! 残念ながらリアルマネーではなくネットゲームの手持ち資金のことだけれど、画面に並んだ9桁を見たら、キャーと叫びたくなるくらいにうれしかった。
私が今ハマッているのは『私のホストちゃん』というケータイゲーム。好きなホストを指名してナンバーワンにしてあげるためにお酒を注文し続けるものなのだけど、参加者はかなり多くて、私が指名しているルイくんは新人なのに、なんと2万人ものお客様がいる。
このゲームとても面白いのは、お金の使いかたにメリハリをつける必要があるところ。だらだら使っていると資金が底をついてしまうけれど、せっせと貯めて、ここぞというイベントで一気につぎ込めば、ノルマ達成報酬などで、投資資金の何割かが回収できるのだ。
私がそのからくりに気づいたのは、残金が8000ドルになった時だった。そしてうまく遊ぶためには最低でも1億ドルが必要だと思い、そこからは10日間以上節約の日々を送った。ゲーム上のお仕事やスロットで毎日ちびちび手持ちを増やし、ホストクラブに行っても安いビールしか注文せずにじっと我慢し種銭を蓄え続けた。
そして待ちに待ったご褒美つきのイベントが発生し、私はこの時とばかりオリャー、と1億ドルを流し込んだ。ゲームで1億を使うためにはシャンパンタワーを20回行わなくてはならない。グラスがピラミッドのように重なり合っていく画像が何度も現れ、私はそれを見つめながらはニヤニヤしっぱなしだった。
1億ドルを消費するのにかかったのはたった5分。この5分のために、私は10日も切り詰めてきた。苦しみを乗り越えたうれしさと興奮とで、アドレナリンが全開になっていく。
ああ、この解放感! しばらく入れてなかったけれど本当のホストクラブでドンペリを開けた時とそっくりである。かなりリアルに作られているからこそ、このケータイゲームに何万人もが夢中になるのかもしれない。
「ホストゲームをやったら、またホストクラブで散財し始めちゃうんじゃないの?」
友達にはこう心配されたけど、むしろその逆で、今、私はいかにもやしを活用して夕食費を安くするかに燃えている。実生活でもお金を貯めたくなってしまったのだ。ある程度の額が貯まったら、ホストに貢ぎに行っちゃ......わないように、自重しようと思う。