9月に原宿にオープンする「ギャルソンカフェ」。イケメンが給仕をするというのがコンセプトであるこの店のアルバイト面接が先日行われた。
 私は「イケメン評論家」という職名を勝手に名乗っているからか社長に頼まれ、選考のお手伝いをした。

 ギャルソンの募集人員20人のところ、応募してきたのはなんと273人。13倍以上の高倍率である。私たちは書類選考に通った60人の男の子を朝から晩まで審査し続けた。

 驚いたのは、彼らのやる気である。このカフェは募集時に「夢を持つ若者を応援したいので、突然の芸能の仕事でシフトを抜けることもOKです」と明示していたからか、芸能関係者や芸能志望者が驚くほど多くやって来た。

 面接では、こちらが頼まなくても「歌えます!」「踊れます!」と次々に披露され、ほとんどショータイム。タップダンス、ブレイクダンス、テクノダンス、バレエなどのさまざまな踊りを楽しめた。
 店のほうもホクホク顔だった。なにしろ歌って踊れるイケメンギャルソンが揃うのだ。彼らは歌いながらコーヒーを運ぶことだってできるだろう。きっと話題になるに違いないのだから。

 けれど私はその中でひとりの男の子が強烈に印象に残っていた。恥じらい顔で、彼は言った。
「僕は、何もできません。だから......、だから、腕立て伏せをします!」
 キムタク似の彼は、十回ほどその場で身体を動かした。細い彼の腕に血管が浮き出て、緊張もあるのか背中が僅(わず)かに震えていた。

 面接が終了し、私は社長に「腕立て伏せの彼も採用してほしい」と頼んだ。すると社長もやはりそのつもりだった。
 別に店は腕立て伏せができる男の子を求めているわけではない。ただ、5人の審査員が注視するなか腕立て伏せをすることに集中した彼の凛とした姿に惚れ込んだ。必死な形相で自己アピールを連呼されるよりも、ずっと胸に響いたのだ。

 ところでこのギャルソンカフェの時給は1000円である。ごく一般的な額なのにここまでイケメンが殺到した理由は「他の店では芝居の公演で休みたいと言うと採用してもらえない」からだった。
 長期でもらえる時給1000円は彼らにとってこんなにも貴重な働き口なのか、となんだか胸が熱くなってしまったのだった。

<オーディションの模様はこちら>
http://ameblo.jp/garcon-cafe/entry-10327451963.html