時代小説や時代劇でお馴染みの“お家騒動”だが、実際はどうだったのか。そんな疑問を抱いた人にお薦めしたいのが本書だ。江戸時代を中心に、なん40件のお家騒動が取り上げられている。
 本書の特徴は、お家騒動を「主家異動」「幕府介入」「藩主押込め」など、幾つかのパターンにカテゴライズしたことだ。また、さまざまな人々の思惑が入り乱れる複雑なお家騒動については、人物相関図が挿入されている。これによりお家騒動の全体像が、つかみ易くなっているのだ。
 さらに「伊達騒動」「黒田騒動」といった有名なお家騒動だけではなく、かなりマイナーなものにもスポットを当てている。内乱寸前までいった人吉藩の「お下の乱」を始め、こんなお家騒動があったのかと、唖然茫然。歴史読み物としても、抜群の面白さだ。
 そして各章のラストには、お家騒動を通じて浮かび上がってきた“身につまされる教訓”が記されている。現代でも有効な数々の教訓を、実例を伴って知ることができるのも、本書の美点であろう。

週刊朝日 2012年9月21日号

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