【Vol.07】東京の今と昔が共存。アットホームな楽しさにあふれた盆踊り大会
舞台は東京の地を見守り続けてきた古刹(こさつ)。
無数の地蔵像が見守るなか、東京の夏を満喫
1958年に竣工した東京タワーは、高度経済成長期から現在に至るまで東京のシンボルであり続けてきた。電波塔としての中心的役割を東京スカイツリー(墨田区押上)に譲った現在も東京有数の観光名所であり、多くの外国人観光客が訪れては、東京タワーをバックに記念写真の撮影に興じている。だが、そうした観光客の多くは、ここから歩いてわずか数分の場所で毎年夏、魅力的な盆踊り大会が開催されていることを知らない。
浄土宗の七大本山のひとつである増上寺。ここは徳川将軍15代のうち6人が葬られている徳川家の菩提寺であり、貴重な文化財や宝物を抱える古刹である。境内の一角には千躰子育地蔵尊(せんたいこそだてじぞうそん)と呼ばれる1300体以上の地蔵が並んでおり、そのほとんどにカラフルな風車が奉納されている。カラカラと音を立てて風車が回る光景はまさに壮観。この「地蔵尊盆踊り大会」は、こうした地蔵の供養を目的のひとつとして長年行われてきた、増上寺にとっても大切な年中行事のひとつなのだ。
この盆踊り最大の魅力は、やはり光り輝く東京タワーのふもとという抜群のロケーション。風格のある増上寺の本堂越しに東京タワーを望む光景は、何度目の当たりにしても圧倒される。そして、その前には提灯を張り巡らした櫓(やぐら)。いくつもの時代が共存するその光景は「地蔵尊盆踊り大会」ならではのものだ。
もうひとつの名物は風車。
主役は浴衣姿の子どもたち
ブースの一角では千躰子育地蔵尊に奉納されていた風車をひとつ300円で購入することもできる。踊り手たちのなかには浴衣の帯に風車を差し込んでいる者も。その姿もなんともかわいらしい。
ここの櫓でかかるのは「東京音頭」や「炭坑節」など東京の盆踊りにおけるスタンダードな唄が中心だが、「かざぐるま」「お地蔵さん」という増上寺オリジナルの盆踊り唄で踊ることもできる。アットホームな雰囲気のある盆踊り大会なので、踊りの輪に入る際のハードルも低い。きっとさまざまな世代の踊り手たちがあなたを温かく迎え入れてくれることだろう。
子育て・安産に霊験(れいけん)あらたかと伝えられる西向聖観世音菩薩(にしむきせいかんぜおんぼさつ)を安置する寺だけあって、この盆踊り大会の主役は子どもたち。スーパーボールすくいや射的、輪投げといった、古き良き盆踊り大会の姿を今に伝える出店が並び、手持ち花火の無料配布なども行われ、どこもたくさんの子どもたちでにぎわう。子どもに負けじと、露店に立つのは僧侶たち。飲食店は近隣の会社が担うなど、結果として大人も子どももひとつの場を楽しんでいる。
なお、初日の盆踊りタイム前には、地蔵を供養する地蔵尊法要も執り行われる。古くて新しい東京を体験できる盆踊り大会のひとつである。
文:大石始 写真:大石慶子
本企画は『東京の魅力発信プロジェクト』に採択されています。
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