【Vol.08】来場者みずからがさまよい、探索し、発見する。デジタル・テクノロジーを用いた現代の「祭り」
さまざまな領域を超えた、
前代未聞のミュージアム
来場者の4~5割が訪日外国人、というミュージアムが東京・お台場にある。なかにはこのミュージアムを訪れるため日本にやってきたという来場者も少なくないそうで、筆者が会場を訪れた際も各国の旅行者が興奮気味に一つひとつの作品を観覧していた。ただし、このミュージアムは通常のミュージアムとはかなり趣を異にする。来場者みずからがさまよい、探索し、発見するという「体験型のアート・ミュージアム」なのだ。
この「チームラボボーダレス」を手がけるのは、集団的創造によって、アート、サイエンス、テクノロジー、デザイン、そして自然界の交差点を模索している学際的な集団であるアート・コレクティヴ、チームラボ。アーティストやプログラマー、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家などで構成されており、さまざまな領域を超えた活動で国際的な注目を集めている。
2018年6月にオープンした「チームラボボーダレス」で繰り広げられているのは、デジタル・テクノロジーを用いて視覚と聴覚を刺激するアートの世界だ。海、山、川、火、水などをテーマとする作品が次々に目の前に現れるが、自然と人間が溶け合った世界観はアニミズム的。そこには人間と自然、自分と世界との新しい関係を模索してきたチームラボならではのまなざしもうかがえる。
作品と鑑賞者のボーダーすらも
存在しない世界
「チームラボボーダレス」の特徴は、境界のないアート群による「地図のないミュージアム」という点にもある。ここでは一つひとつの作品が溶け合い、影響し合う。また、多くの作品はインタラクティヴなデジタル・インスタレーションという側面を持ち、鑑賞者が触れることで作品はすぐさま変化していく。そのなかにはアスレチックやボルダリング、お絵かきといった既存の様式をモチーフとしている場合もあり、楽しみながら作品との新たな関係性を構築することができるわけだ。
なお、このミュージアムでは写真撮影も可能(フラッシュ・三脚の使用は禁止)。来場者の多くはこぞって作品を撮影し、SNSにその模様を公開している。来場者の体験がそうやってシェアされていくわけだが、すべての作品は常に変化し続けており、二度と同じ体験をすることはできない。つまり、「チームラボボーダレス」は会場に足を運ぶことでのみ、その瞬間の「作品」を体験できるという、一期一会のミュージアムでもあるのだ。
祭りや盆踊りとは、本質的にさまざまな「ボーダー」を超えていくものでもある。そこでは性別や年齢、国籍といった属性は無化され、時には演者と鑑賞者のボーダーも、あるいは生者と死者のボーダーも融解していく。あらゆる境界線を超えていこうとするこの「チームラボボーダレス」とは、デジタル・テクノロジーによる現代の「祝祭」ともいえるだろう。あらゆる感覚が揺さぶられる「チームラボボーダレス」の非日常空間のなかで、祭りの未来像を想像してみよう。
森ビルデジタルアートミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス
常設
平日 10:00-19:00
土日祝 10:00-21:00
会場:森ビルデジタルアートミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス(お台場パレットタウン 2階)
チームラボボーダレス
https://borderless.teamlab.art/jp/
※お出かけの際は休館日にご注意ください
文:大石始
teamLab
Exhibition view of MORI Building DIGITAL ART MUSEUM:teamLab Borderless,2018,Odaiba,Tokyo
(c)teamLab
teamLab is represented by Pace Gallery
本企画は『東京の魅力発信プロジェクト』に採択されています。
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