【Vol.02】ボン・ジョヴィも驚いた現在進行形の盆踊り。根っこにあるのは盆踊り文化に対するリスペクト
YouTube(※)を使いながら
地域の盆踊りを活性化
2013年に始まった新しい盆踊りながら、斬新なアイデアで東京の盆踊り界でも異彩を放ってきたのが「中野駅前大盆踊り大会」だ。
まず話題となったのが、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅなど、ポップスの楽曲を盆踊りに導入した点。しかも、Perfumeのヒット曲「Baby cruising Love」には福島県の代表的な盆踊り唄である「相馬盆唄(そうまぼんうた)」の振り付けを転用するなど、盆踊りとポップスの融合を推し進めてきたのがこの盆踊りのユニークなところ。近ごろ、一部の盆踊りでは古くからの盆踊り唄のみならず、ポップスやロック、ディスコなどのダンスミュージックが導入され、伝統の更新が図られているが、「中野駅前大盆踊り大会」はその急先鋒ともいうべき盆踊りである
実行委員長を務めるのは、日本民踊鳳蝶流(にほんみんようあげはりゅう)の家元師範として各地の教室で指導を行う鳳蝶美成(あげは・びじょう)。いわば踊りのプロフェッショナルだ。1981年生まれの彼は幼少時代から盆踊りに触れてきたが、地元の盆踊りが高齢化し、活気を失いつつあることに危機感を持っていたという。ポップスの導入は、そうした盆踊りの活性化を目的とするものだったのだ。また、彼は踊りの振り付け動画をYouTube(※)にアップするなど、従来の盆踊り団体にはなかった発想でさまざまな活動を展開中。現代進行形の盆踊りカルチャーのキーパーソンともいえる人物である。
日本各地の盆踊り唄を生演奏で
堪能できるのも醍醐味のひとつ
2018年からはDJをゲストに招き、盆踊りとディスコの融合も企画。アメリカのロックバンドであるボン・ジョヴィのヒット曲「Livin’ On A Prayer」に合わせて「鹿児島おはら節」の振り付けを踊った動画がSNS上で拡散されて大きな話題を集めると、なんと本家ボン・ジョヴィがその投稿に反応するというオマケまでついた。
2019年にはキッスやクイーンの盆踊りタイムで盛り上がったうえに、歌手の高橋洋子が出演して、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニング曲である「残酷な天使のテーゼ」の盆踊りバージョンを披露。さらにはDJ KOOが自身のヒット曲であるTRF「EZ DO DANCE」で会場を熱狂させた。ただし、先述のボン・ジョヴィ同様、クイーンの「Don't Stop Me Now」では河内音頭の振り付けをあてるなど、かつてPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅの楽曲で試みた成果が生かされているところがユニークだ。
「中野駅前大盆踊り大会」の土台となっているのは、盆踊りとディスコの融合企画「盆ディスコタイム」の前に用意された正統派の盆踊りタイム。ここでは日本各地のさまざまな盆踊り唄を中野区民謡連盟のプロフェッショナルな歌い手・演奏者が演奏し、それに合わせて踊ることができる。「黒石じょんから」や「ドダレバチ」といった青森県の民謡では音頭取りが唸り、三味線奏者が腕を振るう。「郡上節」(岐阜県の民謡)での生き生きとしたグルーヴもまた、生演奏ならではのものだ。
斬新なアイデアが注目されている「中野駅前大盆踊り大会」だが、根っこにあるのは盆踊り文化に対するリスペクトと愛情。まさにオールド・ミーツ・ニュー、今体験すべき盆踊りのひとつだ。
※YouTubeはGoogle LLCの商標または登録商標です
文:大石始 写真:大石慶子
本企画は『東京の魅力発信プロジェクト』に採択されています。
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