【Vol.01】踊り手たちの熱気は都内最高峰?強烈なリズムが人々を魅了する
まるでロック・コンサート。
太鼓、三味線、ギターが織りなす大合奏
約10年前にこの盆踊り大会を初めて訪れたときは本当に驚いた。場所は、首都高速7号線の高架下に広がる特設会場。踊りの輪が会場いっぱいに広がっていて、その熱気は「盆踊り=年配の人が踊るもの」という僕のなかの固定概念をがらりと変えてしまうほど凄まじいものだった。踊りの輪の先にはたくさんの提灯が吊るされた舞台が鎮座しており、太鼓や三味線、ギターなどで構成される楽団、さらには美しい衣装姿の音頭取りがその上で熱演を繰り広げている。スピーカーは通常の盆踊りで使われるものとは比べものにならないほど巨大。ほとんどロックコンサートのような迫力である。
この盆踊りで鳴り響いているのは、地元の「東京音頭」ではなく、遠く離れた大阪を発祥とする河内音頭だ。1曲数十分をかけ、音頭取りはひとつの物語を語り、バックの演奏家たちはその語りをもり立てる。浪曲などさまざまな芸能を吸収しながら独自のスタイルを構築してきた、完成された舞台芸能である。また、この河内音頭、戦後になってからはエレキギターを導入したほか、かつてはレゲエやディスコなどと融合した例もあり、日本の盆踊り文化においても少々異色の存在といえるだろう。
演奏家同士の掛け合いも見所。
観てよし、踊ってよしの河内音頭
そんな河内音頭が東京・錦糸町の地にはじめて持ち込まれたのは1982年。大阪出身者ではなく、河内音頭の熱狂的な愛好家たちと錦糸町商店街の若手たちが手を組み、ゼロの状態から立ち上げた点がこの盆踊り大会のユニークなところだ。その後、何度か会場を移しながら、現在の場所に定着。現在では東京東部を代表する盆踊り大会となった。また、東京の地に河内音頭を広めるうえで多大な役割を果たしてきたという点においても極めて重要な意義を持っている。
河内音頭のステップは一目見ただけで踊れるほど簡単なものではないが、一度、身体で覚えてしまえば、踊りの輪から抜けるのが惜しくなるほどついつい没入してしまう楽しさがある。たとえ踊りの輪に入る勇気がなくても、大阪からやってきた名手たちが繰り広げる熱演に触れるだけでもこの盆踊り大会に足を運ぶ価値がある。音頭取りの歌唱に合わせ、即興的に演奏を変えていくプレーヤーたち。その緊張感みなぎるやりとりはジャズ的ともいえるが、やはり河内音頭独自のおもしろさがある。
なお、錦糸町の街は魅力的な酒場が立ち並ぶ場所でもある。盆踊りでほてった体を地元の酒場でクールダウン。隣の席の酔客と話が弾むこともあるだろう。ぜひ盆踊りとともに錦糸町の街も楽しんでいただきたい。
すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り
毎年8月末開催
会場:竪川親水公園特設会場(首都高速7号線高架下)
すみだ錦糸町河内音頭大盆踊りオフィシャルサイト
https://www.kinshicho-kawachiondo.jp/
文:大石始 写真:大石慶子
本企画は『東京の魅力発信プロジェクト』に採択されています。
このサイトの情報は、すべて2019年8月現在のものです。予告なしに変更される可能性がありますので、おでかけの際は、事前にご確認下さい。
→英語版はこちら(English version)