11年の決勝、先発した1年生・松井は、近藤健介(日本ハム)、乙坂智(元DeNA)ら横浜の強力打線を4回までわずか1安打無失点に抑えたが、5回に2安打目となる二塁打を打たれたところで、3年生の柏原史陽に交代した。

 一方、2年生の柳も9回2死まで1失点で、相馬和磨にスイッチ。試合は1対1の延長10回2死から横浜が3連打し、近藤のサヨナラ打で甲子園出場を決めた。

 翌12年、両校は準々決勝で再び相まみえる。前年同様、松井vs柳の先発対決となり、7回を終わって1対1とどちらも譲らない。

 だが、10年秋から県大会で横浜に4連敗中の雪辱に燃える桐光は8回2死一、二塁から連打で2点を勝ち越し、柳をKO。代わった田原啓吾(元巨人)からも安打と押し出し四球で4対1とリードを広げた。

 横浜も9回に4番・高浜祐仁(日本ハム)の三塁打などで1点差に追い上げ、なおも1死三塁と最後の粘りを見せる。だが、松井は冷静さを失わず、捕手が膝をついて捕球するほどの低めギリギリのスライダーで次打者のスリーバントスクイズを封じ、11個目の三振を奪うと、最後の打者を中飛に打ち取り、2年越しの“打倒横浜”の悲願を実現した。

 甲子園に出場した松井は、1回戦の今治西戦で、前出の坂元を上回る22奪三振の大会新記録を達成している。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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