アッシャー、アーティストとしての社会的責任について88歳の歌手兼活動家と対談
アッシャー、アーティストとしての社会的責任について88歳の歌手兼活動家と対談

 アッシャーがベテラン歌手で社会活動家でもあるハリー・ベラフォンテと先週末、マンハッタンにあるコミュニティセンター“92nd Street Y”で対談を行った。進行役はジャーナリストのソルダッド・オブライエンが務めた。

 1時間におよんだ同対談において、37歳のアッシャーと88歳のベラフォンテは、アーティスト・活動家・セレブ仲間、そして優れた指導者と弟子として、温かく心を通わせていた。ベラフォンテのことを、ヒーローであり良き助言者であり、父のような存在と呼んだアッシャー。そのベラフォンテは彼について、2年前にジェイ・Zやビヨンセなどを“社会的責任に背を向けている”と非難した時に比べてはるかに肯定的だった。

 そのジェイ・Zは会場の客席におり、ベラフォンテが自分やアッシャー、コモンなどをコミットメントを新たにしたとして称賛し、「長生きして良かった」と言うのをうなずいて聞いていた。

 アッシャーは、人種差別と警察の暴力に抗議する新曲「Chains」を出したばかりだ。NasとBibi Bourellyをフィーチャーした同曲のインタラクティブ・ビデオは、最近警官に殺されたマイケル・ブラウンやエリック・ガーナーなどの黒人たちを映し出し、視聴者が映像から顔をそむけると停止するようになっている。同ビデオはアーティストの社会参加を支援するベラフォンテのNPO、www.sankofa.orgの協力を得て作られたもの。

 アッシャーは、「我々アーティストは自分たちのプラットフォームを有意義に利用しなくてはならないと思いました。ベラフォンテと彼の仲間たちは、そのプラットフォームのために持っている物すべてを使ってくれました」と語った。

 話に聴き入るあらゆる世代の聴衆を前にベラフォンテは、奴隷制時代にさかのぼって黒人の立ち直る力の歴史を要約して述べたり、芸術の力を“銀行に飛びこむ”のを遅らせる手段と定義したりと、教師の役割を果たした。以前、彼はオバマ大統領を慎重すぎると批判したが、今回は大統領のスローガン“Yes We Can”を冷やかし、「賢い政治と呼ぶなら、あれは文章的に完結していない。Yes we can……何ができるんだい?」と問いかけた。

 一方のアッシャーは、その文章を完全なものにしたくて堪らないようだった。国を“希望の地”にすると語りながら目に涙を浮かべ、将来の動向がどういう結果になるのかを自分に問いかけているように見えた。

 彼は「Chains」を話し合いの始まりだとし、「いつ本当に我々の制度にある問題に立ち向かうのだろうか」と問いかけた。

 なお、アッシャーとベラフォンテが一緒に歌うことはないのかと会場から訊ねられると、ベラフォンテは10年前の脳梗塞が原因で声帯が弱くなっていることを告白。「そんなわけで、しわがれ声を絞り出して歌うところなんて思い出して欲しくないからね」と言い、会場の笑いと拍手を誘った。