■大学生活の半分はコロナに奪われた

 大学での研究テーマは外国人労働に関する問題を扱った。

「日本の少子高齢化は世界に先駆けて進んでいますけど、単純に子どもを増やすのは限界がある。別の角度から考えたとき外国人労働者の存在は無視できません。その実態を知りたいと思って、日系ブラジル人労働者の人たちを中心に調べました」

 さまざまなデータにあたるうちに気づいたことがあった。

「入国者何十万人、帰国者何万人っていう数字は、単なる数やないんです。すべてが一人ひとりの人間で、家族もおるし、人生がある。経済ってお金の動きを学ぶ学問やと思っていたんですけど、お金を動かすのは人間で、人間を知ることが経済なんだって思い知らされました。ほんまはフィールドワークで調査したかったんです。でもコロナ禍で全然できんくて……。悔しかったです」

 大学1年生のときには友人とバックパックでフィリピンのセブ島を旅した。アジアの経済にも興味を持ったが、コロナ禍で旅も難しくなった。

「大学生らしい時間は2年生までで、止まってしまいました」

 それでもオンラインで教授と議論し、自分の中に生まれたテーマを掘り下げた。同じ学部の友だちと学びあえた時間も忘れ難い。

「テスト前に集まって、一緒に勉強した時間がほんま楽しくて、青春でした。みんな尊敬できる人たちで、出会えてよかったです」

 友人たちが就職を決めるなか、福本さんは迷うことなくアイドルとしての活動を続けている。それでも大阪市立大卒という学歴は、確かに自分を支えていると感じている。

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大学に入って仕事の幅が広がった