安倍晋三元首相の銃撃事件後の7月12日、旧統一教会の問題に取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の弁護士らが会見を開き、今でもはびこる被害の実態を訴えた。この会見に元信者として被害を語った40代の女性がいた。冠木結心(かぶらぎけいこ)さんだ。母親が旧統一教会の信者で「信仰2世」だった冠木さんは、二度の合同結婚式を経験し、韓国に移り住んだことがある。その経験をまとめた『カルトの花嫁』(合同出版)を10月末に出版する冠木さんに、信者時代の壮絶な経験や教団の実態を語ってもらった。
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「統一教会の合同結婚式といえば、桜田淳子さんの印象しか世間には残っていないかもしれません。その他の日本人信者が、祝福(合同結婚式)後にどうやって暮らしていたのか、ほとんど世に知られることはありません。統一教会の信仰2世である私は、教団に身をささげて韓国に渡りました。私が結婚した1990年代は、まるで人身売買のように数千人もの日本人が韓国に送られていました。裁判でお金は取り戻せたとしても、壊された家族や狂わされた人生は、誰も補償してくれません」
冠木さんは後悔の念をにじませながら、自身の半生をこう振り返る。
冠木さんは、両親の夫婦仲が悪い家庭で育った。幼少期から父親に苦しめられる母親の姿を目の当たりにしてきた冠木さんは、結婚に関して複雑な思いを抱いてきたという。
「若い時の父は反抗期がない“良い子”だったそうです。その反動が中年になって現れたようで、父の罵詈雑言によって、母はよく父に泣かされていました。私は、子どもながらに母のことが一人の女性として不憫でならず、私だけでも母の味方でいてあげようと思いました」(冠木さん、以下同)
そんな状況で、母親が精神的な拠り所としたのが旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)だった。母親は冠木さんが高校生のときに入信。冠木さん自身も、娘である自分の幸せは、母親が幸せになることだと考え、時を置かずして旧統一教会への入信を決めた。