まさに絶好のタイミングの来日。ブルーノ・マーズを迎えた「アップタウン・ファンク」が11週連続で米国ビルボードシングルチャート1位を獲得しているマーク・ロンソンが、3月24日、東京・代官山ユニットにて来日公演を行った。
いまや時代を代表するDJ/プロデューサーの1人となったマーク・ロンソンだが、今回の来日公演、実は単独公演としては10年ぶりのステージとなる。もちろんチケットは発売日当日にソールドアウト。満員のフロアには、開演前から彼の音楽を待ち構えるリスナーの期待が充満していた。
ロンソンのステージ先立って登場したのは京都出身、NYのDJ集団<Heavy Hitters>のメンバーとしても知られるDJ LEAD。マイケル・ジャクソンの「Baby Be Mine」やジェームス・ブラウンの「Get Up」など、大ネタを交えつつ、自身のスクラッチ・プレイでも魅せ、短い持ち時間ながら緩急をつけて行く。前半は70年代~80年代のディスコやファンク、ソウル、R&Bなどを中心に、後半は90年代以降のヒップホップを中心にプレイする流れの作り方も巧みで、その演奏にファンもクラップやハンズアップで応える。
そのDJ LEADが最後の曲として掛けたノーティー・バイ・ネイチャーの「Hip Hop Hooray」にフロアが盛り上がる中、遂にロンソンがステージに登場すると、どよめくような歓声がそれを迎えた。
冒頭、ロンソンは様々なTV番組からリッピングしたと思しき「ナンバー・ワン・ソング・イン・ザ・カントリー!」(もちろん「あの曲」のことだ)というナレーションをマッシュアップして流し、場内のテンションを一気に引き上げる。そこから繋いだ一曲目はミスティカルを招いた「Feel Right」。先日リリースしたアルバム『アップタウン・スペシャル』中でも、最もファンク色の強い曲からステージはスタートした。曲中には本人もマイクを握り、「東京のみんな、調子はどう?メイク・サム・ノイズ!」と挨拶代わりの煽りで会場を盛り上げた。
この日はDJセットでのライブとなったロンソン。そのDJスタイルは、自身の楽曲を中心に、そのリミックスやロンソン自身が影響を受けたと思しき曲を掛けるというもの。もちろん「アップタウン・ファンク」は名実ともにロンソンをトップ・アーティストに引き上げた曲だが、これまでも数多くのヒット曲を出してきた彼だけに、彼がプレイする一曲一曲にファンは大きな歓声で応える。
前半はそのペースで自身の曲を繋いで少しずつ盛り上げるのかな、と思っていた矢先のスタート10分後、「ドゥン・ドゥッドゥードゥ・ドゥッドゥードゥ・ドゥン~」という耳馴染みのドゥワップ・コーラスが流れはじめる。誰もがお待ちかねの「アップタウン・ファンク」だ。一度聴いたら忘れない最強のベースラインとコーラスが強調され、そこにラップも加わって、フロア向けに再構築されたその「アップタウン・ファンク」は、コンパクトなポップスとしてまとめられていたアルバム・バージョンとは異なる魅力を放ち、オーディエンスのダンスを誘う。ブリッジ部やコーラス・パートではフロアからも掛け声や合唱が起き、早くも前半のピークを迎えた。
その後はキヨン・スターを迎えた自身の曲「アイ・キャント・ルーズ」などを挟みつつ、中盤ではリル・ウェインの「ア・ミリ」から、カニエ・ウェスト「ニュー・スレイブズ」に繋ぐなど、現在進行形のモダン・ヒップホップへの敬愛も垣間見せた。
終盤のラスト・スパートでは、自身の2ndアルバム『ヴァージョン』に収録の「ジャスト」(レディオヘッドのカヴァー)でニューオリンズ風のブラスサウンドを聴かせ、テイム・インパラのケビン・パーカーを招いた「ダッフォディルズ」では、フロアをドープでサイケデリックな空間に塗り替えるなど、その音楽性の振り幅を見せた。
20時過ぎから始まったステージは、この時点で20時53分。するとロンソンが「残り時間はあと7分だけなんだけど、最後まで一緒に楽しもう!」とMC。言いながら掛けたのは、自身のプロデューサーとしてのブレイク作となったエイミー・ワインハウスの名曲「ヴァレリー」だ。アップテンポなシャッフル・ビートに乗せて、今は亡きエイミーが聴かせる素晴らしい歌。そんな一曲に合わせて揺れるフロアはとても美しかった。
「ヴァレリー」が最後まで流れたあと、ロンソンが再びMC「今日は本当に楽しかった。次はぜひバンドで来たいと思ってる。絶対また会おう!残り時間は3分。みんなクレイジーになる準備はできてる?レッツ・ゴー・クレイジー!」と締め、最後に掛けたのはなんとこの日2回目の「アップタウン・ファンク」。今回はいまや誰もが知っているアルバム・ヴァージョン。ぎゅう詰めのフロアで踊るオーディエンスも、当代随一のヒットソングの作り手による粋な力技に楽しく乗っかり、再びの大合唱で幕を閉じた。
ステージングの時間自体は50分程度。短時間ながら、その音楽性の幅広さとプロデューサーとしてのセンスを見せつけた今回のステージ。次は是非バンドで、というのはもちろん観ているこっち側の気持ちでもある。「アップタウン・ファンク」で踊りながら、ロンソンの横にブルーノ・マーズを夢見たファンも少なくないはずだ。その夢の共演の実現にも、いつか、是非期待したい。
◎公演情報
2015年3月24日(火)東京・代官山UNIT
info:http://www.creativeman.co.jp/
◎リリース情報
『アップタウン・スペシャル(Uptown Special)』
2015/03/04 RELEASE
SICP-4387 2,200円(tax out.)