写真はイメージです(Getty Images)
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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)などの「宗教2世」の新たな問題に注目が集まっている。宗教2世とは、特定の信仰を持つ親や家族などから教えを受けて育った子どものことだ。なかには、「宗教虐待」とも呼ばれ、深刻な人権侵害を受けているケースがあるという。

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「親からムチによる虐待を受けた」

 こう打ち明けたのは、ある宗教2世の元信者の男性Aさんだ。10月28日、カルト対策に取り組む「日本脱カルト協会」が開いた記者会見で、宗教2世の信者らが、苦しみの実態を語った。Aさんの宗教は子どもにムチ打ちすることで知られ、Aさんもガスホースで作られたムチでたたかれたと振り返る。

 さらに、Aさんの家庭では“異常”なルールが多数あったという。友だちは「悪魔の支配下にある」という理由で、深い付き合いは制限された。モンスターが出てきたり、戦ったりするゲームや漫画も禁止された。格闘技に関する授業も許されなかった。そして、大学への進学や就職についてはこう振り返る。

「大学への進学は勧められなかった。というのも、目前に迫っているこの世の終わりに向けて布教活動を本業として優先しないとならないとされたからです。パートタイムの仕事をしながら、伝道になるべく多くの時間を捧げなさいと。職業選択の自由などなかった。虐待、権利の侵害を受けたと思っています」

 いまこういった宗教2世に対する虐待が問題視されている。厚生労働省では10月6日づけで、全国の自治体に「保護者の信仰に関連することのみをもって消極的な対応を取らず、また、子どもの側に立って判断すべきである」と明記した通知を出した。

 文部科学省でも同日に、「児童生徒の心のケアを図る必要があると考えられる事案があった場合には(中略)、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと共にチーム学校として、教育相談に取り組むこと」といった通知を出している。

 虐待に苦しむ宗教2世はどのくらいいるのか。日本脱カルト協会事務局長の久保内浩嗣弁護士はこう語る。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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