ノ・ミンハ
さらに、事故当日、梨泰院一帯に配置された警察は百数十人にすぎなかった。少し前に釜山で行われたBTSのコンサートでは5万5000人の観客の安全のために2000人もの人員が確保されていたことがわかり、判断の誤りに世間の非難が集まっている。
コロナ禍で2年もの間、ハロウィーンを満喫できなかった若者たちにとっては久しぶりのストレス発散の場だった。撮影が目的のユーチューバーやインスタグラマーも多数参加した。
今回の事故を究明するなかで、「ある若者グループ」の存在が浮上している。目撃者の証言によると、事故の場所はメインストリートへ向かう人たちと、そこから抜け出そうとする人たちが混じり合い、動ける状況ではなかった。
ところが事故直前、人波の一番後ろから4～5人の男女が「押せ！」と叫ぶと、一斉に人々が倒れて波のように流されたという。
この道は傾斜がある。高いほうにいた人から押されると、低いほうに向かってドミノのように人が倒れていく。メインストリートの入り口でも多数の人が倒れ、そこから脱出できずに気絶した人もいた。
警察は目撃者40人から聴取をはじめ、メインストリートの監視カメラを分析し、「押せ」と叫んだ集団の行方を追っている。
今、梨泰院のその路地には、主を失った靴やゴミがあちこちに散乱し、見るも無残なカボチャ、そして、血なまぐさいにおいが残っている。
韓国政府は11月5日までを死者を哀悼する期間とし、事故原因の究明に向けて万全を期している。156人の死者に対する補償と2人の日本人を含む外国人被害者の国家との外交問題、そしてコロナ不況からの回復を期待していた梨泰院の飲食店の不安まで、さまざまな解決すべきことがある。
ノ・ミンハ（現地ジャーナリスト）
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