個人的な話で恐縮だが、TOEIC820点の筆者は今までに英語にいくら費やしたのだろうか? 最初の就職先が外資系であり、研究者の仕事では論文の読み書きや発表・質疑で英語が必須だったこともあり、結構な投資をしてしまった。語学学校や教材に数十万円の出費を重ねてきた。語学にかかわる本の購入はゆうに100冊を超える。他事に振り向けていたらと後悔しても後の祭りだ。嘆息あるのみだ。コンピューターによる音声翻訳システムのTOEICスコアが少なくても900点に到達し、毎日自ら自動翻訳を活用して、その有用性を実感しているので、今後は英語に鐚(びた)一文かけない。

 また、筆者は、最近日本語・中国語の翻訳に自動翻訳を活用している。中国語習得に膨大な時間やお金を投資しないで、十分コミュニケーションできるので、ずいぶんと得をした気分になれる。

英語が「世界語」でなくなる?

 前節で「日本人が英語を習得するのに必要な学習時間」を推測したが、改めて、同じグラフを「非英語話者が英語を習得するのに必要な学習時間」として、非英語話者は何時間勉強すれば、米国人と商談できるかを示すグラフとして読み替えよう。(もちろん、英語話者である英国人なら0時間だが)フランス人の場合は600時間で対等に会話ができ、インドネシア人の場合は900時間、ロシア人の場合は1100時間、日本人の場合は2200時間の英語学習の準備が要る。

 今ここで考えたのは学習時間だが、言葉は常に使っていないと忘れてしまう(※注4)ものである。これを防ぐために、日々忘れないように英語に触れておく時間が必要である。また、英語を使った後は日本語では感じない疲労があることからわかるように結構な負荷がかかっている。こんなに大きなハンディを抱えている日本人は圧倒的に不利だ。英語だけが世界語であるというのは至極不公平だ。日本語が世界の中心なら立場は逆になり米国が大変不利になるが、現実はそうでない。さらに、困ったことに、日本の経済的な地位は逆に下がり続けている。いっぽう躍進を続ける中国だが、米国を追い抜くかといえば一朝一夕にはそんなことは起こらない。英語の天下は今のところ変わらない。

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自動翻訳に任せれば、英語の地位も低くなっていく