写真はイメージです(Getty Images)
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、日本の性差別社会ついて。

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 先日、アメリカに住む友人が来日したので、彼の同僚も一緒に3人と食事をする機会があった。ニューヨークの投資会社に勤めていて、3人のうち2人は日本が初めてという30代の女性(アジア系)と男性(ヨーロッパ系)だ。何十億円もの投資を募るために、たった1週間で20社近く回ったという。そして案の定、訪日初めての2人に日本の印象を聞くと、口を揃えてこう言うのだった。

「いろんな国に出張しているけど、これほど女性と会わない国は珍しいよね」と。

 聞けば、誰もが知る大企業の名前が次々に出てきたが、彼らとのミーティングに参加するのは9割が男性だったという。そして当然のように受付は全員女性であることも、私のことを少し気にしながらも笑いながら話していた。制服を着て、高く甘い声で、深々とお辞儀をする若い女性たちの姿にはかなり衝撃を受けたようだった。さらに凄いのは、こちら側の女性に対して、日本人男性たちが商談中一度も目すら合わせようとしない、話しかけもしない、ひどい場合は名刺を渡そうともしないこともあったという。

「私が自己紹介しても、あ、そうって感じですぐにダン(男性の同僚)に話しかけるんだよね。私のことを、話す価値のない人だと思っているのがわかった」

 日本に暮らす女としては、目をつむっていてもやすやすと想像できる光景ではある。念のために、それって日本以外では起きないの? だったら早めに亡命したい……みたいなことを言ったら、「そんなことはない。女の目を見ない、特にアジア人女性を無視するようなビジネスの場所はあるよ。でも、日本の会社にはあからさまにそれをする人が多いよね」とのことだった。

 もし、この場にいるのが全員、日本に暮らす女だけだったら、きっと私たちは悔しさに涙する勢いで互いを慰め、どう復讐しようかと盛りあがるだろう。でも、彼女はニューヨーカー。日本がどうなろうがハッキリ言ってどうでもよく、ビジネスがうまくいけばただそれでOKなのだ。というより、「日本ってウワサ通りでウケル~」と楽しんでいるような調子すら彼女にはあった。もちろんアメリカにだって性差別は根深くある。それでも、ビジネスの場でそれをやったらおしまいよ、というレベルで女がストレスを感じる機会は日本よりも、きっとずっと少ないのだろう。

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「女性活躍推進法」と女の現実