ベスト8の壁は厚かった。カタールW杯の決勝トーナメント1回戦。日本代表が前回大会準優勝のクロアチア代表と対戦し、1-1の同点でPK戦に突入し、1-3の末に敗れた。グループリーグでドイツ、スペインと優勝候補を撃破したが、史上初のベスト8進出はならなかった。
相手は格上だったが、一方的に主導権を握られたわけではない。ドイツ戦やスペイン戦と比較すると、より多くチャンスを演出していた。前半43分に右サイドのコーナーキックからショートパスをうけた堂安律がクロスボールを入れ、前田大然が左足で押し込んで日本が先制。今大会4試合目で初めて先制した。
スポーツ紙の記者は悔しさを押し殺して振り返る。
「正直、勝てるチャンスがあっただけにもったいなく感じました。クロアチアは前回大会のハイプレスで攻守の切り替えが速いイメージだったが、この試合はそこまで圧力を感じず、攻撃の起点だったモドリッチもうまく封じ込めていた。同点に追いつかれても勝機があると感じましたが…」
リードしたことで受けに回ってしまったか。後半10分にイバン・ペリシッチのヘディングで同点に追いつかれると、後半19分に三笘薫、浅野拓磨を投入。ドイツ、スペイン戦の時のように運動量で相手を上回り、試合の流れを引き寄せるかに見えたが、クロアチアは日本の攻撃を徹底的に研究していた。三笘が前を向いてボールを持たせないようにパスコースを遮断。パスが渡っても2、3人が囲んで自由にさせなかった。互いに体力を消耗し、プレーの精度が落ちていく中でPK戦は1人目の南野拓実、2人目の三笘が連続で相手ゴールキーパーに防がれ、1対2で迎えた4人目の主将・吉田麻也もゴールを決められなかった。
大会前の下馬評は決して高くなかった。その中で目標のベスト8進出は届かなかったが、ドイツとスペインを撃破し、グループリーグ首位で決勝トーナメントに進出したことは日本のサッカー史に刻まれる快挙と言っていいだろう。不安視された森保一監督の采配も光った。3バック、4バックを試合展開や相手の力関係によって使い分け、途中から切る交代カードもズバズバ的中した。今大会終了後、次のW杯に向けて監督続投を望む声が高まっているが、スポーツ紙デスクは「森保ジャパンは最善を尽くしたが、もう1ランクステップアップするためには監督を交代するべきだ」と強調する。