下位からランキングが発表されていき、最初に落選が告げられたのは春日だった。春日は3位という結果に終わった。あとはトップ2を残すのみとなった。川島は1位に入っているのか、入っていないのか。

 出演者たちがクラッカーを持って川島の周りを囲んだ。くす玉や紙吹雪も用意されている。川島の1位が発表され、祝福されることが半ば確定しているような状況だった。

 そんな中で読み上げられたランキング1位の名前は、川島ではなくバナナマンの設楽統だった。視聴者も出演者たちも、もちろん川島本人も、誰もが川島の1位を確信していたところで、まさかのどんでん返し。全員の表情が固まり、空気が凍った。「ピリッとする」でもなければ「スベっている」でもない、バラエティ番組ではなかなか見られない独特の雰囲気ができていた。

 この空気ができた原因を分析したい。まず、大前提として、出演本数ランキングはいま勢いのあるタレントを示す1つの指標ではあるが、それがタレントとしての格の高さを意味するわけではない。

 ギャラ単価が高く、長く続く冠番組を持っているような超一流のタレントほど、自分のレギュラー番組以外にはほとんど出ないので、出演本数では上位に入らない。「出演本数ランキング」はある意味では「お手軽に使われているタレントランキング」でもあり、数字そのものに深い意味はない。

 だからこそ、川島も春日も、テレビ番組の中で冗談半分、本気半分で「1位を獲りたい」と宣言したのだ。そんな中で、番組の企画でランキングの結果が発表されるからには、当然どちらかが1位なのだろうと思われていた。どちらも1位でないのなら、この取るに足りないランキングをわざわざ大々的に発表する意味がないからだ。

 そこではしごを外されたからこそ、視聴者や本人たちの衝撃が大きかったのだ。でも、ある意味では、この企画で『ラヴィット!』制作チームの本気が見えたような気がする。この番組は、グルメや観光の話題が取り上げられるだけのお気楽な朝の情報番組ではなく、あくまでもお笑い番組なのだ。スタッフが力強くそう宣言する声が聞こえてくるようだった。

 たかが数字、されど数字。数字という明々白々な形で結果が出てきてしまうからこそ、人はそれに踊らされるのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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