これまでは、IT技術者など高度人材でないと簡単には先進国への移住はできないと思われていたが、最近は、看護師などはもちろん、運転手などの職種でも日本人への求人が増えている。低賃金で文句を言わずに働く日本人は使いやすいからだろう。雇う側と働く側の相思相愛関係が生まれているのだ。
これでは、「誰でも脱日本」の時代が始まると見るのが自然だろう。
実は、21年12月10日号で書いたとおり、日本の教育より海外の教育を選ぶ「教育エクソダス(大量の国外脱出)」の動きは既に始まっていたが、それはまだ一部の人たちに限定されていた。そこでも紹介した著名な投資家ジム・ロジャーズ氏の「私がもし10歳の日本人なら、直ちに日本を去るだろう」という言葉は、当時はやや過激に聞こえたが、あれからわずか1年で、今や、ごく普通のこととして理解され始めた。
低賃金でパワハラ・セクハラ当たり前、非正規差別にジェンダー差別、年金は崩壊必至、そもそも日本経済に明日はないと考える若者たち。それでも日本に残って、高齢者を支えるために一生懸命働くのが賢明なのか。「日本脱出のリスク」より「日本に残るリスク」の方がはるかに大きいのは明らかだ。今年は、本物の「エクソダス元年」になるような気がしてならない。
※週刊朝日 2023年1月20日号