古賀茂明氏
古賀茂明氏
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 2022年は、日本の賃金が先進国の中でも異常に安いということが一般の人に広く理解された年だった。これはとても良いことだ。政府も経営者も労働者や世論の賃上げを求める声に真剣に対応せざるを得なくなるからだ。現に、「今年の春闘」では、例年以上の賃上げ実現が予想されている。

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 だが、こうした動きは、「too little, too late」でしかない。年数%の賃上げでは、若者の日本離れを止められないからだ。

 最近、ワーキングホリデーで海外移住する若者が急増中というニュースが溢れている。

 22年12月24日の日経朝刊によれば、豪州のワーキングホリデーのビザ申請件数で日本人は21年7月~22年6月で前年比2.4倍の約4600人。この傾向は今もなお加速しているという。

 日本では非正規雇用で働いても貯金などできないという人が多い。豪州やカナダで働けば、時給2500円から3000円で、十分貯金できるし、英語の勉強にもなるのだから、普通の人なら、自分もと考えるのは当然だ。

 特に、昨年の急激な円安でさらに多くの人の関心を集めている。日経の12月17日付記事によれば、20年3月の1豪ドル=64円程度から22年10月下旬には94円まで下落。円の価値が4割以上も下がった。

 1月3日の朝日新聞デジタルにも「29歳すし職人、海外で夢見る普通の暮らし 時給2倍以上に託す希望」という見出しの記事が出ていた。こちらもカナダや豪州を目指す若者の話で、そこでは、海外を選ぶ理由として、単におカネの問題だけでなく、「仕事中に雑談する余裕もあり、日本よりもずっと働きやすい」とか、日本と違って非正規労働者の差別を感じないというような非金銭的理由も挙げられている。

 海外留学も円安で諦める人が増えたが、ここにきて、ワーキングホリデーで現地で働いて貯金し、それから留学に切り替えるというケースも増えているようだ。

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わずか1年で「エクソダス」に現実味