雇い止めの危機にある講師らは、労働契約法に定められている通り、有期雇用が通算5年を超えた労働者を無期労働契約に転換するように大学に求めている。だが、大学は、改正労働契約法が施行された2013年から通算して10年を超えた場合に無期転換が申し込めると主張したという。
冒頭の講師の場合、2000年代前半から20年近く勤めてきたが、2013年から数えると10年満期、つまり大学の主張に従うにしても無期転換権獲得の1日前に契約終了を通告されているのだ。
講師はこう指摘する。
「残る講師は、採用されて通算5年、10年未満の人がほとんどです。無期転換を阻止するために、近く期限を迎える講師を“狙い撃ち”しているのだと思います」
組合の執行委員長である佐々木信吾さんによると、約3年前に東海大で「非常勤講師を大量に全員排除する計画にある」という内部情報が漏れてきたという。
「この情報の真偽を確かめるために私たちの関連団体である首都圏大学非常勤講師組合は団体交渉を行い、大学を問い詰めました。大学の学部長が『そんな話はない。学部長会議でも出ていない話だ』と断言してきたので、私たちは矛を収めたのです。そうしたら、実は水面下で進んでいたのです。こうした行為は明確な不当労働行為だと私たちは考えています」(佐々木さん)
研究者らに適用される「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」(通称、イノベ法)と、大学の教員等の任期に関する法律(任期法)の特例により、通算契約期間が10年を超えると無期転換を申請することができる。
これについて文部科学省は、全国の大学に対して、このルールを利用した雇い止めを避けるように注意喚起していた。
佐々木さんがこう指摘する。
「文科省のお達しにより、かなりの大学は、有期雇用者を無期転換権獲得直前に辞めさせることを諦めました。にもかかわらず、東海大は雇い止めを進めています」