村上靖彦さん(写真:本人提供)
村上靖彦さん(写真:本人提供)

村上:あとから結びついたというのは面白いです。たしかに外国にルーツのある子どもたちは、日本語があまり得意ではない両親のサポートや通訳をしていますし、学校に通えていない子もとても多い。ヤングケアラーの子どもたちも、不登校の子が多いですよね。どちらも、社会から隠れてしまう存在なのかもしれません。

丸山:おっしゃる通りです。そういった人たちのことを描きたいという思いが、私にはずっとあるのです。

村上:丸山さんは、ノンフィクションでは書ききれない部分を、リアリティーを持ってフィクションという形で描かれています。その中で、先ほどおっしゃった「こういう場所があったらいいな」「こういう大人たちがいたらいいな」という視点は、実はすごく大事だと思うのです。そこには例えば、社会のすき間に追いやられてしまった人や差別を受けている人、あるいは外国籍で困難を抱えている人、そういった方々が幸せに生きていくためにはどういう社会をつくったらいいのか、という眼差しはとても太い思想です。そのような丸山さんの姿勢に深く共感していますし、さまざまな社会問題を巧みなストーリーに合わせて構成するというのは、並大抵のことではありません。

(取材・構成/眞崎裕史)

■丸山正樹(まるやま・まさき)
1961年東京都生まれ。小説家。早稲田大学卒業後、シナリオライターとして活動。2011年松本清張賞に応募した、「ろう者」を主題としたミステリ『デフ・ヴォイス』で作家デビュー。以後、社会的に「見えない存在」に焦点を当て、創作を続ける。

■村上靖彦(むらかみ・やすひこ)
1970年東京都生まれ。大阪大学人間科学研究科教授・感染症総合教育研究拠点(CiDER)兼任教員。2000年、パリ第7大学で博士号取得(基礎精神病理学・精神分析学)。13年、第10回日本学術振興会賞。専門は現象学。

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