丸山正樹さん(撮影:写真映像部・高橋奈緒)
丸山正樹さん(撮影:写真映像部・高橋奈緒)

村上:ヤングケアラーについて、世間では家事労働や介護の側面がすごく強調されているのですが、彼ら・彼女らにとって、そこはポイントではありません。実際に話を聞いて分析してみると、労働ではない部分、つまり家族のことをたくさん語っていました。「ケア」はもともと、「気遣う」「心配する」という意味です。家族のことが心配で心配でしようがない。心配から逃れられなくなっている存在こそ、ヤングケアラーと考えた方が良いと気づきました。丸山さんはどうしてヤングケアラーを取り上げようと思われたのですか?

丸山:(手話通訳士を主人公とした)『デフ・ヴォイス』シリーズで取り上げたCODA(ろう者の親から生まれた聴こえる子ども)もヤングケアラーだ、と意識し出したのがきっかけで、実は2016年頃から書いてみたいと思っていました。

村上:僕は8年ぐらい前から西成に通って、子ども支援の現場に関わっています。『キッズ・アー・オールライト』では、その現場のディテールがすごくリアルに描かれていて驚きました。しかも、外国にルーツのある子どもたちのことも描かれていますね。

<『キッズ・アー・オールライト』には、SNS上で「このままだとあたし おばあちゃんころしちゃうかも」と書き込んだヤングケアラーの少女や、差別や貧困の中で生きる日系ブラジル人の少年らが登場。「子供の家」代表の河原、半グレ集団に睨みを利かせる「シバリ」らが、子どもたちの支援に奔走する>

丸山:在日外国人については、技能実習生や入管の問題などで割とニュースで取り上げられていました。一方で、彼らの子どもについてはあまり触れられていない、という印象がありました。それで、ヤングケアラーと在日外国人の子どもの2本柱で書こう、と考えました。その二つは最初から結びついていたわけではなくて、書いている途中に気づいたのです。「在日外国人の子どもも、実はヤングケアラー的存在なのだ」と。

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丸山正樹さんが描くとても大事な視点とは