過敏性腸症候群(IBS)データ
過敏性腸症候群(IBS)データ

「精神的ストレスが悪化要因の一つであることがわかっています。ストレスがかかると脳からの指令で『セロトニン』という神経伝達物質が放出されます。これが腸の粘膜のセロトニン受容体にくっつくと、腸の動きを活発にする『アセチルコリン』などが放出され、下痢が起こるのです」

 加えて原因として考えられているのが、からだの肥満細胞から分泌される「NGF」というタンパク質だ。ストレスがかかるとNGFが分泌され、腸の知覚神経を刺激する。すると、消化管の知覚が過敏になり、ささいな刺激で腹痛や腹部膨満感が起こる。

「すべての患者さんが強いストレスを感じているわけではありません。ただ、下痢が続くために『外出時に便意が起こったらどうしよう』など、強い予期不安を抱えているケースが多いことは確かであり、症状を持続させてしまう大きな要因です」(稲森医師)

 治療薬としては、排便をコントロールする働きのある薬が使われる。

 軽症のIBSには、腸内細菌のバランスを改善するビオフェルミンなどの整腸剤や、腸の水分を吸着して下痢を止める「高分子重合体ポリカルボフィルカルシウム」などがある。中等症以上には、腸の動きを抑える作用を持つ抗コリン薬、腸粘膜のセロトニン受容体を遮断する「5-HT3拮抗薬(商品名イリボー)」が用いられる。

「とくに効果が高いのが5-HT3拮抗薬です。下痢型のIBSにしか使えない専用の薬で、腸管の過剰な動きを抑える作用と、知覚過敏をやわらげて腹痛を抑える作用があります」(同)

 同薬は効き目が速く、効きが弱ければ増量できるのもメリットという。

「薬が効いて予期不安が改善し、休学していた大学に行けるようになった患者さんもいます。1種類の薬で効果がない場合、頓服の下痢止めなどを併用するとうまくいくこともあるので、あきらめず医師に相談してください」(同)

■食生活と思考の癖を整える

 金子医師は「薬と並行して、食事療法も大事」だと訴える。

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