■「ユニクロの真似」ができない理由
上場企業の22年9月中間決算は業績を伸ばす企業が相次いだ。純利益は前年同期を約1割上回り、中間期としては過去最高水準となった。23年3月期決算の業績予想を上方修正するメーカーも相次いでいる。
ファストリの賃上げについて、他の企業の経営者はどう感じているのだろうか?
「今、賃上げができる企業は給与水準を上げてきているわけですから、そんななかで自分の会社が賃上げできないとなると、当然、社員のモチベーションは下がります。ですから、企業全体に対して、賃上げを本気で考えないといけない、と思わせるインパクトは結構あったのではないでしょうか」
ただ、今回のような賃上げは「ファストリだからこそできる」と、山田さんは見る。
「今回のユニクロ報道を見ていると、『40%』という数字が目立つわけですが、実際には職種や階層によって年収で数%から約40%の幅があるようです。ユニクロの経営は、本部で経営・事業戦略を立て、現場は基本的にそれを実行していく。給与水準の個人差は大きいようで、人材の流動性も比較的高くて、それに応じたマネジメントをしている。ところが、伝統ある大手企業ではそういうやり方はできないんですね」
ファストリと同様、比較的新しい企業では優秀な人材の給与を集中的に上げる傾向があるという。
「でも、歴史のある巨大な組織のなかではみなさん、横並びの公平性、ということを意識するわけです。若い人や一部の人材を厚遇しようとしても、組織が複雑化しており、その人たちだけで会社がまわるような構造になっていませんから。それに、これまでにいる人たちが妬みますしね。やはり、そこで働く多くの人たちのモチベーションって、すごく大事なんです。なので、急に給与に差をつけることは難しい」
■本気で賃上げ要求をしない組合
年収アップだけではない。
今回、ファストリが新入社員の初任給を25万5000円から30万円にアップすることも話題になった。