アウトプレースメントの業界は玉石混交だ。きちんと再就職の面倒をみてくれる会社であれば救いがあるが、「そうでない場合、リストラされた人は不幸になってしまう」と山田さんは言い、こう続ける。
「もちろん、組合は雇用の安定にはこだわらないといけませんが、やはり現実問題としてリストラが必要となったときには、その対象となった人たちが積極的に次の仕事に移っていけるサポートをするように、組合の考え方を変えていく必要があると思います。そのうえで、賃上げ交渉に力を入れていく。でないと、物価の上昇に賃金が追いつかない。そういう意味では春闘をしっかり立て直さなければならない」
それによって日本の賃金全体を底上げしていく。さらに工夫をしながら成果主義を給与に盛り込んでいくことが必要だと、山田さんは訴える。
今、日本の人件費の安さは先進国のなかでも際立っている。平均給与はOECDの統計で韓国よりも低い。
「そんななか、東京大学の学生の就職先を見ると、大きな変化が起きています。4、5年前までは中央省庁や銀行、商社、大手メーカーへの就職が多かった。ところが、最近は外資系企業が増えました。アクセンチュア、マッキンゼー・アンド・カンパニー、PwCコンサルティングなど。外資の場合、最初からやりたい仕事を思い切ってさせてもらえますからね。もちろん、給料も高い。彼らはもう終身雇用なんて全く信用していませんから。学生全体で見ると、まだそれほど大きな動きにはなっていませんが、外資系企業に就職したり海外に人材が流出してしまったり、といったことが数年前から起こっています」
■さすがにこの人件費はおかしい
給料が上がらないことが経済活動を停滞させ、さまざまな社会問題の要因となってきた。インフレの時代になると、生活はどんどん苦しくなっていく。そんな日本を去っていく若者も増えるだろう。優秀な人材が得られない日本企業は活力を失っていく。
「さすがに今の人件費の安さはおかしい、という経営者の意識は強くなっていると思います。給与を広く上げていくことの重要性が問われています」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

