若き日の入江慎也さん(左)と矢部太郎さん(画像=入江さん提供)
若き日の入江慎也さん(左)と矢部太郎さん(画像=入江さん提供)

 これはね、自分が経験した純粋な思いなんですけど「その仕事のやりがいは、やってみないとわからないことがある」。それを痛感しました。

 あくまでも、この仕事を始めた頃の僕の思いですし、そんなことはないとは思うんですけど、自分だけが浮いているような感覚があったんです。コンビニに入っても、飲食店に入っても、違う見られ方をしているというか。

 もっと端的に言うと、たまたま友だちの女の子が住んでいるマンションで仕事をすることがあったんですけど、正直なところ「この姿を見られたくないな」と思いました。もちろん、何も悪いことをしているわけではないんですけどね。それでも、事実として出てくる感情がある。

 それとね、ずっと仕事というのは楽しいものだと思ってきたんです。芸人時代は。というのも、芸人で「金がない」とか「仕事がない」という愚痴は聞いても「つまんない」という愚痴を聞いたことがなかった。みんな楽しそうだし、実際楽しいんです。

 そんなに仕事がなくても芸人同士で飲んでたら楽しいし、良い先輩がたくさんいるし、舞台でウケたらなおさら楽しいし。つまんないという感覚は一切ありませんでした。

 でも、清掃の仕事に入った時、先輩に「仕事は楽しいですか」と聞いたら「楽しいとか、楽しくないとかは考えたことない。お仕事だから」という答えが返ってきたんです。

 その時にハッとしたというか、いかに芸能界が特殊なところだったのかをその一言で思い知らされました。芸能界は自分がやりたくて飛び込む世界。一方、今僕がいる業界は、もちろん一概には言えませんけど、何か夢が砕けたとか、結婚して生活を築いていかないといけないとか、好きだからではなく生きる手段としてやっている方が多い。その違いをわが身で感じた時に、思うことがたくさんありました。

 2月1日に、吉本をクビになってからの思いを軸に書いた書籍を出したんですけど、本を書く中で思ったのは「あ、自分は芸人をやっていたんだな」ということでした。まだ3~4年前のことなんですけどね。遠い昔のことに思えるというか。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ
自暴自棄の時に矢部から言われた言葉